サルからヒトへ、古代DNAが明かした人類のルーツ 遺伝子配列の変化をさかのぼると祖先がわかる
Colum コンタミネーション問題とは? 古代試料に残されたDNAはわずかで、これらの試料を増幅して分析を行いますが、このときに問題となるのが、現代人のDNAの混入(コンタミネーション)です。 最初は、この問題に注意が払われることは稀でしたが、近年はDNA分析を前提とした発掘が行われ、混入を防ぐための慎重な措置が取られています。 ネアンデルタール人の化石が発見された19世紀以降、彼らが私たちの祖先なのか、共通の祖先から派生した親戚なのか、論争が繰り広げられてきましたが、1997年に発表されたネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの研究によって一応の決着を見ました。
この研究では、ネアンデルタール人がホモ・サピエンスと70万~50万年前に分岐した親戚であるとされました。 また、ホモ・サピエンスの中にネアンデルタール人由来のミトコンドリアDNAがなかったことから、21世紀の初め頃は、彼らはサピエンス種と交わることなく絶滅したと考えられていました。 しかし、この結果は「次世代シークエンサ」による核ゲノム解析が可能になったことで、覆されることになります。2010年の研究で、ネアンデルタール人のDNAが現代人のDNAに流入していることが判明したのです。
■ネアンデルタール人とサピエンス種 ネアンデルタール人とホモ・サピエンスが分岐して以来交雑がないということであれば、両者が共有するDNAの変異はすべての現代人の集団で等しくなるはずです。 そうならないのは、サピエンス種の出アフリカ以後も交雑があったということ示しています。 超有名な化石人類「ネアンデルタール人」 ひさしのように大きく前に突き出た眉に、がっちりした体格で知られる「ネアンデルタール人」。2010年の研究で、サハラ以南のアフリカ人を除く、アジアとヨーロッパの現代人のDNAに約2.5%の割合でネアンデルタール人のDNAが流入していることがわかりました。