サルからヒトへ、古代DNAが明かした人類のルーツ 遺伝子配列の変化をさかのぼると祖先がわかる
「えっ? 最初の人類はアウストラロピテクスじゃないの?」。あなたの教養は30年前の常識のままかもしれません。 【イラストで見る】ミトコンドリアDNAの系統解析の結果 2022年のノーベル医学生理学賞受賞で注目が集まっている進化人類学。急速に発展するこの分野の最新成果をまとめた『人類の起源』(中公新書)の著者、篠田謙一国立科学博物館長が監修を務め、同書のエッセンスを豊富なイラストで伝える『図解版 人類の起源』より、一部抜粋・編集してお届けします。 ■古代DNA研究は活況のときを迎えた
これまで私たちの祖先を探す努力は、主に化石の発見とその解釈によるものでした。しかし、21世紀になり、生物の持つDNA配列を自由に読み取れるようになったことで、状況は大きく変わります。 2006年に高速でDNAを解析する「次世代シークエンサ」が実用化され、大量の情報を持つ核DNAの解析が可能になりました。 これ以前の古代人のDNA分析は、技術的な制約から、母系に遺伝するミトコンドリアDNAの情報に限定されていましたが、核DNAが持つ、父母双方からの情報を得られるようになり、古代DNA研究は活況を迎えました。
その象徴ともいえるのが、2022年、古代DNAで人類進化の謎を解明したスバンテ・ペーボ博士のノーベル生理学・医学賞の受賞です。これにより、古代DNA研究の重要性が、国際的に認められたといえるでしょう。 ■研究に革命もたらす「次世代シークエンサ」 1980年代から始まった古代DNAの分析。 かつては母親から受け継ぐミトコンドリアDNAといった両親の一方の情報に限定されていましたが、「次世代シークエンサ」の実用化により、両親双方からの情報を分析することが可能となりました。
大量のDNA配列を高速で解析! 生物が持つDNAは、G(グアニン)、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)という4種の「塩基」から構成され、ヒトでは細胞の核とミトコンドリアの中に収まっています。 子どもは、両親から半分ずつの遺伝子を受け継ぐわけですが、それには母から子どもへ直接受け継がれるミトコンドリアDNA、父から息子だけに継承されるY染色体という例外もあります。 ヒトが持つDNAの膨大な情報を「次世代シークエンサ」が高速で解析することで、これまで不明とされていた系統関係も明らかになってきています。