<掛布雅之が語る>マー君&マエケンの米移籍の裏に見える問題
メジャーへの移籍問題が、連日、報道されている楽天の田中将大選手に続いて、同世代の広島の前田健太選手もメジャー挑戦の意思を持っていることを表明した。私は、ポスティングシステムについて大きな疑問を持っていて、メジャー移籍に関しては、新しい仕組みの海外FA制度を設定して、FA1本に絞るべきだという私見を持っている。その話は、またの機会に譲ろうと思うが、次々と日本のプロ野球のスターが、アメリカに旅立つ理由や構造を考えねばならないと思う。 ■メジャー流出の原因 国内の強打者不在 ダルビッシュ有が、3年前にメジャー移籍を志したとき、彼は、日本のバッターやチームが試合をやる前から白旗を上げている状況に嫌気がさしたようなことを言っていた。マー君やマエケンがメジャー挑戦を切望する理由の中にも“日本には心躍る名勝負を演じるバッターがいない”というものがあるのではないか。 マー君に至っては24連勝である。国内にもう敵がいない、やり残したことはない……と彼が考えても不思議ではない。つまりアスリートにとって、一番重要なモチベーションの問題である。一流になればなるほど探究心やさらに上を目指す向上心は強くなる。そこを満足させるためには、メジャーの選択肢しかなくなってしまっているのである(年俸高騰の問題もあるだろうが)。そう考えると、彼らの気持ちを理解できないわけではない。 ■記憶に残る名勝負が減少 今の野球界に名勝負はあるだろうか。パ・リーグの4番バッターで代表的な選手は誰だろう。西武の浅村栄斗も素晴らしい4番打者だが、マー君との記憶に残る対戦はあっただろうか。日ハムの中田翔は、怪我で途中からバッターボックスにいなかった。では、マエケンはどうだろう。我が阪神の4番は、マートン、鳥谷敬が打ったが、今季のクライマックスシリーズで記憶に残ったのは、第一戦の先発に抜擢されたルーキーの藤波晋太郎が、広島の4番のキラにゲームを決めるホームランを打たれ、マウンドでうなだれたシーンだけだ。