楽天モバイルが“大幅前倒し”でプラチナバンドを運用開始できたワケ “飛びすぎない”対策も必須に
急ピッチでスタートしたプラチナバンド、完全仮想化もプラスに
700MHz帯の運用を始めたばかりの楽天モバイルだが、同社は現在、ローミングという形でKDDIから800MHz帯を借りており、エリアの補完に活用している。自社のプラチナバンドとKDDIローミングのすみ分けはどうなっていくのか。竹下氏によると、「KDDIのローミングは人口カバー率99.9%を補完してもらうのが目的だが、あまりご迷惑をおかけしてもいけないので、基本的にはわれわれでさばいていくことになる」という。 現在、基地局がある場所ではローミングを行っていないが、「今、KDDIに頼っている部分もプラチナバンドで埋めていき、全てを組み合わせてベストミックスで提供していく」(同)方針だ。実際にローミングを終了するかどうかは、「展開をしてみて、エリアの状況を見ながら(KDDIと)お話させていただくことになる」(同)という。 免許の交付から約8カ月でプラチナバンドのサービスインにこぎつけた楽天モバイルだが、総務省に提出した開設計画では、2026年3月にサービスを開始するとしていた。もともと、この時期はあくまで保守的に見積もった場合としていたが、差し引きすると、サービスインを1年半以上巻き上げた計算になる。1月の段階で楽天グループの会長兼社長の三木谷浩史氏から5月ごろと発表されてはいたが、南里氏は、「本当はもっと遅い計画だった」と明かす。 「基地局側の技適取得やライセンス、700MHz協会との調整を考えると、本来はもう数カ月はかかる予定だった。特に技適は認証機関が空いておらず、最初はお断りされてしまっていた。ギリギリ一発勝負だったが、認証は何とか取れ、その後の調整をしてなんとかサービスインにこぎつけた」(同) ネットワークが完全仮想化されているため、周波数の追加も比較的容易にはなっているものの、「3MHz幅に対応するためのカスタマイズは必要だった」(竹下氏)。南里氏によると、「VoLTEやハンドオーバーなどの機能は1.7GHz帯からの移植になるが、そこと組み合わせて動作させるDU(Distribution Unit=基地局のアンテナや制御する装置)側の開発工数が多かった」という。 開発しているのは、楽天モバイル傘下の楽天シンフォニー。竹下氏も、「楽天シンフォニーのRAN開発部隊と、膝を突き合わせて開発状況をトラックしていった」と振り返る。実際に商用のソフトウェアができたのは、「5月中旬ごろ」。そこから商用環境に導入しつつ、試験を併用しながら運用開始に至ったという。 もっとも、「ベースバンドの動作として大きな分かれ道になるのが、FDD(周波数分割複信)とTDD(時分割複信)。700MHz帯は1.7GHz帯と同じFDDだったため、基本設計が同じなので帯域幅のカスタマイゼーションに集中できた」(同)。綱渡りであったのは事実だが、前倒しができたのはネットワークが完全に仮想化されていたため。投資額を500億円に抑えられているのも、こうしたベースがあるからだ。