香川県琴平町では今、老朽化した旅館の改修や空き店舗の再生などで新たな宿泊施設が次々とオープンしています。人口減少が進む町で地域活性化の呼び水としても期待がかかる動きを取材しました。 （「森と山」　山内健社長） 「こちらが江戸時代に建てられた「虎屋別館」。これは「菊の間」という部屋」 香川県琴平町。「こんぴらさん」の愛称で知られる金刀比羅宮の参道にある老舗旅館、「虎屋別館」です。江戸時代に建てられ、歴代の天皇も宿泊された由緒ある旅館です。老朽化により１９８５年に営業を終了していましたが、２０２４年８月、地元の企業が内部を改修しリニューアルオープンさせました。 （「森と山」　山内健社長） 「なるべく当時の材料を残したままで悪いところだけを補修するやり方をした。欄間は地元の大工に聞いても今の技術ではとてもではないが、できないと言っている。天井の布も今の手法ではできないだろうと言われている」 この老舗旅館を復活させたのが、宿泊業や飲食業を営む、「森と山」で社長を務める山内健さんです。まんのう町出身で琴平町の高校に通った山内さんは、今回の取り組みには琴平町がこれからも魅力的なまちであり続けてほしいとの思いが込められているといいます。 （「森と山」　山内健社長） 「この町を元気にしたいという思いは強い。「また来てください」「もっと楽しんでもらいたい」という思いでやっている」 山内さんは、虎屋別館のリニューアルのほかにも参道に「うどん店」や「カフェ」、「土産物店」などを次々とオープンさせ「ことひら町おこしプロジェクト」として再開発を進めています。県内有数の観光客数を誇る金刀比羅宮を擁する琴平町ですが、コロナ禍には、年間の観光客数が１００万人を切るまでに減少しました。 コロナ禍が明け現在は、回復傾向にあるもののピーク時の年間５２０万人と比べると依然、半数以下の状態が続いています。こうした状況の中で生まれた新たな動きを参道の店舗も歓迎しています。 （参道の店舗は…） 「昔の虎屋は老舗だったので、名前を知っている人は結構いるので客層も年配の人や、若い人も多いから利用する人も多い」 「活気があるのがいい。若い人が増えてきた」 プロジェクトでは今後、参道を挟んだ向かいに建築家、隈研吾さんが設計した新たな宿泊施設の建設も予定しています。 （「森と山」　山内健社長） 「こんぴら参りは１泊２日の客が多い。１泊２日では琴平の良さを十分に分かってもらえない。連泊してもらうには面白いところがないといけないのでこんぴらさんに頼るのではなく、地元で面白いまちづくりができたら」 再開発の動きは参道近くの商店街でも… （河原大記者） 「商店街の空き店舗を再生した新しい店が並んでいます。こちらの再開発事業、コンセプトは「地域まるごとホテル」です。参道につながる新町商店街に突如として現れる笑う鬼のオブジェ。人材派遣大手、パソナグループの「地方創生」が手がける再開発事業のシンボルです。 「地方創生」では、商店街の空き店舗を再生してこれまでに宿泊施設や日本茶カフェ、さらにはベーグルショップ、文房具店などをオープンさせました。宿泊施設は、コンセプトごとに５棟が整備されていて、どの施設にも和のテイストが盛り込まれています。 （「地方創生」　近江淳社長） 「ターゲットはインバウンドがメイン。商店街という「日常」から入ると驚きのあるような「非日常」の空間をあえてつくることで空間の楽しみ方を演出した」 宿泊施設は、素泊まりが基本。食事などは近くの店舗を利用してもらうことで人が出歩き、まち全体に活気を生み出すのが大きな狙いです。 （「地方創生」　近江淳社長） 「「食」と「泊」を分離していて商店街もいろいろなところに金が落ちる、商店街一体がホテルというコンセプト。それぞれの資源を生かせることと一体でやることで、にぎわいが出るのがメリット」 こうした取り組みを通じて目指すのは、何回も訪れたくなる町への転換です。 （「地方創生」　近江淳社長） 「１回泊まりに来て、今回はこの部屋に泊まったが今度はこちらの部屋に泊まろうなどリピートができる仕掛けをいろいろと考えていきたい」 現在、琴平町の人口は８０００人を割り込み、５０年前の半数近くにまで減少、民間の研究機関、人口戦略会議が２０２４年に発表した消滅可能性自治体にも挙げられています。町は、観光客数の増加だけでなく人口減少対策としても一連の再開発の動きに大きな期待を寄せています。 （琴平町　片岡英樹町長） 「ただ来て、こんぴらさんを楽しんで町中を楽しむだけではなくて、琴平町の町民と触れ合ったり交流することによって準町民のようなイメージを持ってもらって、何度も来たくなる琴平町を目指していくにはこうした再開発の動きはありがたいと思っている」 こんぴらさんの門前町で進む昔からの資源を生かした新たな取り組み。地域活性化の起爆剤となるのか？注目されます。