JAXA「いぶき」に関するシンポジウム(全文1)油井亀美也氏からのメッセージ
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」に関する「今とこれから」をテーマとしたシンポジウムが11日、都内で開催された。 温室効果ガスを監視する衛星「いぶき」の「今とこれから」 冒頭では約5カ月間、国際宇宙ステーションに滞在した油井亀美也・宇宙飛行士のビデオメッセージを場内に流し「母なる大地を守りたい」と地球温暖化の危機を訴えた。 シンポジウムでは、温室効果ガスの地球規模の監視の必要性や、平成21年に打ち上げられた「いぶき」の後継機の紹介などが講演され、後半は「地球温暖化の監視・抑制における衛星の重要性」をテーマに識者によるトークセッションが開かれた。 1.「地球をめぐる温室効果ガス――全球規模での監視の必要性――」 三枝信子氏(国立環境研究所地球環境研究センター副センター長) 2.「いぶきの開発から打ち上げと運用、後継機の開発」 中島正勝氏(JAXA GOSAT-2 プロジェクトチーム ミッションマネージャ) 3.「いぶきによって明らかにされた温室効果ガスの動態」 松永恒雄氏(国立環境研究所地球環境研究センター衛星観測研究室長)
JAXA宇宙飛行士の油井亀美也氏からのビデオメッセージ
司会:では、早速プログラムに入ってまいりますが、今日は基調講演に先立ちまして、皆さまにビデオでメッセージが届いております。JAXA宇宙飛行士の油井亀美也さまからのビデオメッセージです。では、早速ご覧ください。 油井:みなさん、こんにちは。JAXA宇宙飛行士の油井亀美也です。私は昨年7月から12月まで約5カ月間、国際宇宙ステーションに長期滞在をしました。これは私にとって初めての宇宙行き、長期滞在ということで、非常に感動しました。ただその中で一番感動したのはやはり、宇宙から見た地球の美しさですね。本当に言葉では表せないような非常に素晴らしい景色で、私自身その感動を伝えようと何度も写真を撮って、地球の皆さま方に送りました。 そのときに、写真を撮ってるときに驚いたのは、実は地球を取り巻く大気の薄さですね。実は地球に住んでるとき、地球というのは私にとって非常に大きな存在で、母なる大地だと思ってましたね。優しいお母さんで、人間が何をしても許してくれるというふうに思ってたんですけれども、その大気層の薄さを見たときに、あれ、地球に空気ってこれしかないの、っていうふうに思いました。そして宇宙ステーションは秒速約8キロメートルで動いてますので、地球を1周90分でしてしまうんですよね。その90分で1周できてしまうという、その地球の大きさを考えたときに、本当に小さいなと思うようになりました。ですから私自身、地球というのは今までは大きく、なんでも許してくれると思ったんですけれども、非常に壊れやすいものだなというふうに思うようになりました。 さらにもう1つの経験を挙げると、私は実は一度、地球の氷河を撮ってみようと思いまして、チベット高原の氷河を探したんですけど、そのときの残っている氷河の少なさというものに驚きまして、もしかしてこれは、今、皆さん、議論をしようと思っている地球温暖化の影響なのかな、なんて思ったりもしました。 そこで私は、この状況というのをどうしたらいいのかな、というふうに考えるようになりました。やはりそこで、まず先に思い付いたのは、やはりJAXAは、「いぶき」という衛星を持ってまして、温室効果ガス、こちらの状況を、地球上のあらゆる点を、すぐに状況を調べることができる。それはまず現在の状況がどうなのかということを調べるとともに、人類が活動して、協力をして、温暖化を止めようというその活動が有効であるかということも調べることもできると。 また、私は宇宙ステーションに行っていたわけですけれども、国際宇宙ステーションでは水や空気を再生して、なるべく環境を汚さずに人間が住む方法をっていうのを、その技術を持っています。この2つを組み合わせれば私は、地球全体を守りながら人間の生活、これをさらに向上させていくことができると思うようになりました。 私も、先ほど母なる大地と言いましたけれども、母なる大地。これをなんとか守りたいというふうに思いまして、これからは人類が、私も含めてですけれども、親孝行ができればな、というふうに思っております。今日、お集まりの皆さんも、自分が母なる大地、母なる大地に対して、どのような親孝行ができるのかということを考えながら、議論に参加していただければなというふうに思います。今日はどうもありがとうございました。 司会:母なる大地への親孝行というメッセージでしたが、このメッセージも受けまして、それでは早速、基調講演に入りましょう。初めは、国立環境研究所地球環境研究センター、副センター長の三枝信子さまにお願いいたします。お話のタイトルは「地球をめぐる温室効果ガス―全球規模での監視の必要性―」です。では、よろしくお願いいたします。 【連載】JAXA「いぶき」に関するシンポジウム 全文2へ続く