酪農家1万戸割れ迫る コスト高で離農ペースが加速
新規参入者に継承の動きも
酪農家の離農ペースが加速している。中央酪農会議(中酪)によると、直近1月時点の全国の指定生乳生産者団体(指定団体)の受託戸数は、前年同月比6%減の1万361戸と、1万戸の大台を割る可能性が出てきた。毎月の減少率は例年4%前後で推移していたが、経営環境の悪化が離農を助長。経営の継続対策の強化が急務となっている。 【グラフ】酪農家戸数の推移 前年同月と比べた受託戸数の減少率は2023年以降、各月とも6%以上に上昇。24年1月は、地域別では、北海道が5%減、都府県が同8%減と、都府県での減少が特に激しい。「離農ペースが倍増している」(東日本の産地関係者)との声も目立つ。 酪農は高齢化や後継者不足で戸数減少が続いてきたが、生産コストの高騰が経営継続をさらに難しくさせている。農水省によると、23年12月の乳牛用配合飼料価格(工場渡し、バラ)は1トン9万102円と、高騰前の20年同月比で4割高。円安や海上輸送コストの値上がりなどで原料価格が上昇。粗飼料価格も高騰している。 足元では、家庭向けの需要低迷で生乳需給は緩和傾向だ。一方、「このまま戸数と共に搾乳頭数も減ると、数年後にまたバター不足が起きかねない」(乳業関係者)と、先行きを懸念する声も出ている。 こうした中、酪農の経営基盤を次代につなごうと、自給飼料の生産などでコストの課題を解決しつつ、外部からの新規参入者ら第三者に経営を継承する動きが強まっている。 先進地の北海道に続き、都府県でも推進しようと、全国酪農業協同組合連合会(全酪連)と全国酪農協会は21年に支援組織「全酪アカデミー」を設立。これまでに2組が第三者継承を実現した。 全国の酪農協やJAなど39組織が賛助会員として加入し、経営継承を希望する酪農家の情報を随時募集している。全酪アカデミーは「牛や牛舎などの有形資産だけでなく、耕畜連携といった地域でのつながりを維持するためにも、廃業を選ぶ前に第三者継承を検討してほしい」と訴える。
日本農業新聞