自民党総裁選:『小石河』有力3候補の経済政策
「小石河」揃い踏みも浮き彫りになる違い
小泉氏、石破氏、河野氏の3氏は、2021年の前回の総裁選では互いに協力関係にあり、「小石河連合」と呼ばれた。小泉氏の総裁選立候補表明によって、今回は3者ともに候補者に名乗りを上げる、揃い踏みとなった。3者はともに、経済政策面で「改革」の印象が強い。 ただし、石破氏は規制改革などを必ずしも強くは打ち出していない。他方、河野氏は5日に公約を発表したが、経済政策では労働市場改革を打ち出した。河野氏は継続的な賃上げのためには労働市場改革が必要だと主張し、雇用流動性を高めるため解雇時の金銭補償ルールの必要性を訴えた。労働市場改革を規制改革の柱に据えるのは、小泉氏と同様である。 他方、財政政策、金融政策といったマクロ経済政策については、小泉氏の主張は明らかではない。ミクロの規制改革を推進する一方、マクロ経済政策が明確でないのは、小泉氏の後ろ盾ともされる菅前首相の政権時とも似ている。 しかし、石破氏と河野氏はこの点で共通している。石破氏は、アベノミックスの功罪を議論し、積極的な金融緩和と財政拡張の弊害を指摘する。財政健全化を進める観点からも、財政経済諮問会議の発展的な見直しを主張する。 河野氏も財政健全化の推進を主張し、経済・財政や社会保障の推計や見通しを適正にする「独立財政機関」の設置を提案している。エコノミストなど政府と独立した外部の有識者での構成を想定しているという。 また、大幅な金融緩和を修正し、それを、物価高をもたらす円安阻止につなげていくとの考えで、石破氏と河野氏は共通している。
3者の経済政策が最終的にどのように相互に影響を与え合うのかに注目
このように、共通の領域を持ちながらも、異なる領域も相応にあるというのが、小石河3者の経済政策だ。現時点では3者は競合関係にあるが、総裁選の最終局面や選挙後には再び協力関係を持つ可能性もある。特に石破氏と小泉氏との間では、その可能性は小さくないだろう。 この3人の中から総裁が選出される可能性が小さくないことを踏まえると、各者が打ち出している経済政策が、この先どのように相互に影響を与え合い、最終的に新政権の経済政策の形成へとつながっていくのかは、今後の大きな注目点である。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英