引退した「SL人吉」訪日客向け旅行商品開発へ 分解・組み立ての見学ツアーなど熊本・人吉市が企画
3月に引退した人気観光列車「SL人吉」の蒸気機関車(SL)について、JR九州から無償譲渡を受ける熊本県人吉市はインバウンド(訪日客)を狙った旅行商品を秋にかけて開発すると発表した。現在同社が保管するSL「58654号機」をいったん分解したり、人吉市に輸送して組み立てたりする際に見学ツアーなどを企画。58654号機完成から102年となる11月18日にはお披露目イベント開催も目指す。 「SL人吉」が常設展示されるJR人吉駅前駐車場=熊本県人吉市 市が策定した計画「SL人吉ReBORN(リボーン)プロジェクト」によると、58654号機はJR九州の施設で分解、清掃された後に、JR人吉駅前駐車場に輸送して組み立て、常設展示する。SLを敷地内で動く状態で活用できるよう、約60メートルのレールや格納庫なども新設。隣接する人吉鉄道ミュージアム「MOZOCA(もぞか)ステーション868」と一体的に運用する方針だ。 今秋以降、分解・再整備の見学ツアー開催のほか、車両を使ってSLを運搬する様子や、人吉駅周辺で組み立てて保存される過程を見学するツアーも検討する。国宝・青井阿蘇神社や球磨焼酎、球磨川のアユやヤマメといった人吉球磨地域の観光資源を活用した体験ツアーも開発する。 プロジェクトは訪日客の地方誘客や消費拡大に向けた観光庁の支援事業に採択された。市は6月開会の市議会に関連予算約1億1千万円を提案する。欧米や台湾、オーストラリアなどからの誘客を目指し、約5400万円の消費拡大効果が見込めると試算している。 SL人吉は、2020年の熊本豪雨でJR肥薩線が不通になるまで熊本-人吉駅間を運行していた。松岡隼人市長は「SL人吉が帰ってくることに市民は喜んでいる。地域の希望になるよう最大限活用して、たくさんの方にお越しいただきたい」と意気込んでいる。 (古川剛光)