吹奏楽経験者の視点から観た『響け!ユーフォニアム』 リアルな“キャラ描写”に思わず共感
現在、アニメ『響け!ユーフォニアム』第3期が放送中。京都アニメーション制作の人気シリーズで、第3期では主人公・黄前久美子が部長として最後のコンクールに挑む姿が描かれる。 【写真】『響け!ユーフォニアム』第3期キービジュアル 本作の魅力として、コンクールや部内の人間関係に関する個人の葛藤を丁寧に描いていることが挙げられる。そこで本記事では、中学(県大会レベル)、高校(全国出場校)、社会人吹奏楽団でチューバを演奏してきた筆者が、『響け!ユーフォニアム』の内容がどこまでリアルなのかを実体験を基に解説していく。 まず、主人公の所属する北宇治高校吹奏楽部の雰囲気や人間関係について見ていこう。北宇治は全国大会金賞を目指して練習している強豪校にしては、部の雰囲気がかなり良い方。現実にある中でも、先輩・後輩ともに仲が良く「楽しみながら結果も出す」という特徴を持った吹奏楽部であるように感じる。 ただ、実際のところ「全国大会金賞」を目指す吹奏楽部で、あそこまで穏やかな雰囲気に満ちていることはほとんどない。筆者の通っていた高校でもそうだったが、3年生を中心にピリっとした空気が張り詰めていることが多い。仲は良いものの上下関係の厳しさはあるため、練習中まであんなに親しく話していることは少ないだろう。 とはいえ先輩・後輩の仲が悪いわけではなく、全国大会に連続出場する強豪ほど部員同士の関わり方を大切にしている。作中では、コンクール直前に久美子がイニシャルの刻まれた手製のお守りを部員からもらうシーンが描かれているが、筆者も高校時代にもらっている。北宇治ほど穏やかな雰囲気な吹奏学部は少ないものの、作中で描かれる“部員間の関係性”はかなりリアルと言えるだろう。
リアルに近い? 高坂麗奈&滝先生の”キャラ描写”がすごい
『響け!ユーフォニアム』の中では、コンクールメンバーを決めるオーディションを巡る人間関係のトラブルも比較的多く描かれている。オーディションに関しては、筆者の通っていた高校では行われておらず、“オーディション”が部内の人間関係にどう影響するのかは分からない。ただ、各楽器の1st(ソロも吹くエースのポジション)を巡っては、部員間で対立が生まれたこともあった。 全国大会に出場した代のトランペットパート3年生は、例えるなら全員が高坂麗奈のようなタイプで1stを狙っていた。時には口もきかないほど関係性が悪化したこともあり、今考えるとどうやってパート練習していたのか不思議である。 トランペットに限らないが、1stを吹く人は気が強いタイプが多い。本作に登場する高坂麗奈は登場人物の中でもかなりリアルなキャラクターであると言えるだろう。1年時から高い演奏レベルに達しているにもかかわらず、誰よりも向上心を持っていた高坂。彼女が仮に未経験者で入部していたとしても、3年生になるころには1stで吹いていたのではないかと思う。 吹奏楽部の顧問事情についても話していきたい。北宇治の滝先生は優しい口調ながら厳しいことも言い、“部員の自主性”を重んじた「怒らない指導」をしている。全国レベルの学校という視点で見ても、滝先生の描写もかなりリアルではないかと思う。北宇治高校が毎年「結果(全国大会出場・金賞受賞)を目指して厳しい練習をするか、楽しむことに重点を置くか」を全部員で決めているシーンも印象的だ。 筆者が吹奏楽部員であった10年以上前はとにかく厳しく叱責する先生が多かったが、近年では全国大会に出場する吹奏楽部にも「怒らない指導」をする先生が増えているように感じる。 このように『響け!ユーフォニアム』の内容は、現実の吹奏楽部とは少し異なる部分はあるものの、かなりリアルに描かれている。吹奏楽未経験者はもちろん、筆者のような吹奏楽経験者も共感しながら視聴でき、それも人気の理由のひとつだと考えている。 全国大会に出場した吹奏楽部には、必ずといっていいほど多くの部員が集まる。北宇治も例外ではなく、アニメ第3期では100名に迫る部員数となったが、それでも低音パートに希望者が少ないのはあるあるだ。北宇治が出場する関西支部は、現実でも全国屈指の激戦区である。最後のコンクールにどのように向かいどんな結果を得るのか、今後の放送を楽しみに見届けたい。
倉嘉リュウ