思考力を問う就活面接「ロボット掃除機の売上向上策を考えてください」どう答える? 現役コンサルによる1つの解答例
今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した前代未聞の1冊だ。本稿では「ケース面接の例題と解き方」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。 【この記事の画像を見る】 ● 「問題解決の思考力」を測る入社試験 ケース面接はコンサルティングファームの入社試験で必ず出題されるタイプの面接で、「問題解決の思考力」を測るためのものです。 面接官からは、企業や政府・自治体が抱える問題を提示され、あなたはこの問題を解決する打ち手を検討していきます。 コンサルの実務に近い内容の出題も多く、コンサルティングファームによっては直近のプロジェクトをもとに問題を作成しています。 次のケース面接問題に挑戦してみましょう。 ● 外資系コンサルの入社試験に挑戦! 面接官: 「ある家電メーカーのロボット掃除機の売上向上策を考えてください」 ● 回答のヒント ・ロボット掃除機の提供価値を踏まえて、どのような人がロボット掃除機の主なユーザーであるかを想像しましょう。 ・ロボット掃除機の売上を分解し、経営環境を踏まえてどこを改善していくべきか、打ち手の方向性を定めましょう。 ・ロボット掃除機の消費行動プロセス(製品を認知し、興味を持って購入を検討し、実際に購入し、使用を継続する)を想像したときに、どのような打ち手を講じれば販売台数を増やせるでしょうか。
回答のポイント:ロボット掃除機のユーザーと購買行動のプロセスを想像する 既存ユーザーや潜在的なユーザーを想像し、購買プロセスを踏まえた売上向上策を具体化しましょう。 以下が解答例です。 ● ロボット掃除機の提供価値と主なユーザーを想定する 私は、多様な家電製品を製造販売している総合電気メーカーをクライアントとして想定し、ロボット掃除機の売上向上策を検討します。 検討に先立ち、ロボット掃除機の提供価値や主なユーザーの傾向について整理したいと思います。 提供価値 ・掃除にかかる時間や手間を省くことができる。掃除機は自分でかけないといけないが、ロボット掃除機は自動で掃除してくれる 想定される主なユーザーの傾向 ・忙しくて自分で掃除する時間をとれない ・自分で掃除機をかけることを負担に感じている ・ワンフロアで一人暮らし ・広いリビングがある ・目新しい技術や家電製品を積極的に取り入れる ● ロボット掃除機の売上を分解し、打ち手の方向性を定める 以上のような想定のもと、ロボット掃除機の売上向上策を考えていきます。 ある家電メーカーにおけるロボット掃除機の年間売上は、年間販売台数と販売単価に分解できます。 さらに年間販売台数は、既存ユーザーの買い替え台数と新規ユーザーの購入台数に分けることができます。 ロボット掃除機の年間売上 =「年間販売台数」×「販売単価」 =(「既存ユーザーの買い替え台数」+「新規ユーザーの購入台数」)×「販売単価」 現状、ロボット掃除機は全ての家庭で使用されている家電製品ではなく、機能の向上とともに今後導入する家庭が増えてくることが想定されます。 そこで私は、クライアントが成長余地のあるロボット掃除機市場の中でシェアを拡大していくために、「新規ユーザーの購入をいかに増やし、ファンになってもらうか」に注目して打ち手を考えたいと思います。 ● ターゲット顧客の消費行動プロセスを想定し、打ち手を立案する 新規ユーザーの購入を増やすためには、①当社のロボット掃除機を知ってもらうこと(認知)と、②購入を検討してもらうこと(興味~検討)が不可欠です。 また、買い替えの際も当社のロボット掃除機を選んでもらうために、③購入後の対応(継続)も工夫できるとよいと考えます。 ここからは、これら3つの段階ごとに打ち手を立案します。 ● ①認知の段階 まず①認知の段階では、当社のロボット掃除機の存在や性能を知らない中高年の世帯をターゲットに、家電量販店の売り場でのプロモーション(製品の試用、PR)をすることが有効だと考えます。 私の仮説として、ロボット掃除機の既存ユーザーは、従来の掃除機に対するこだわりもなく、目新しい技術への受容性も高い若者世帯が中心であると考えました。 一方、中高年の世帯は掃除機の使用が当たり前であり、ロボット掃除機に抵抗感があったり、そもそもロボット掃除機の性能を十分に理解していなかったりするため、利用者は少ないのではないかと考えました。 また、この世帯は若者と比較してECサイトの利用も少なく、実店舗に足を運ぶ傾向があると想定できます。 総合電機メーカーであれば、家電量販店とのネットワークを活かし、自社製品の試用スペースを確保して製品をPRすることも可能でしょう。 ● ②興味を持って検討する段階 次に、②興味を持って検討する段階では、お試し期間を提示することで購入のハードルを低くする打ち手が有効と考えます。 当社のロボット掃除機を知っても、価格がネックとなって購入に二の足を踏む方はいると思います。「性能が上がっている」、「とても便利」などと説明を受けたとしても、新規ユーザーであれば半信半疑にならざるを得ないでしょう。 そこで、たとえば1ヵ月間のお試し期間を設けて、満足しなければ期間中の全額返金を保証するプランを提示することで、新規ユーザーは購入を検討しやすくなると考えました。 ● ③継続の段階 最後に、③継続の段階では、部品のアップグレードや効果的な使い方の案内を通じたロイヤリティ(愛着)の向上を目指すべきだと考えます。 ロボット掃除機はスマホアプリによる遠隔操作や、アレクサやグーグルホームなどの音声AIと連携していることも一般的です。 そうしたIoTの側面からデータを取得し、より性能の高いブラシへの交換や、まだユーザーが使用していない機能の案内を行うことで、ユーザーはロボット掃除機を最大限に活用でき満足度も高まり、買い替え時のリピートにもつながるのではないでしょうか。 ● 施策の優先順位付けを行う これまで、以下の3つの打ち手を挙げました。 ・打ち手1:家電量販店でのプロモーション ・打ち手2:お試し期間の提示 ・打ち手3:パーツのアップグレードやより有効な使い方の案内 これらの打ち手について、総合電気メーカーとして「自社の強みを活かせるか」「実行の難易度は容易か」「実行で見込める効果は大きいか」これら3つの観点から改めて評価します。 以上の検討を踏まえ、まずは新規ユーザーの認知を高める家電量販店の売り場でのプロモーションを実施し、並行して利用データを活用したアップグレードや効果的な使い方などの情報発信機能を強化することを提案します。 なお、お試し期間の提示については、売り場でのプロモーション活動を踏まえて、本当にロボット掃除機の価格や性能が購入検討のネックになっているかを確認したうえで必要に応じて検討するとよいと考えました。 以上となります。ありがとうございました。