「この人がいたら絶対面白い」で選べば自然と障害者やマイノリティーがキャスティングに入ってくる『阿佐ヶ谷アパートメント』の制作の裏側
普通とちょっと違うMC
ーー実際に番組が始まってみて、阿佐ヶ谷姉妹さんの魅力はどんなところだと思いますか。 真野:やっぱり自然体。あんまりオンオフで変わらないというか、だからみんな緊張せずに話せるっていうところがまずあります。 細川啓介さん(以下、細川):番組収録を重ねていくうちに、特に美穂さんの素の魅力が出てきたのがこの番組らしさにつながっている気がします。忖度せず、素朴に発言しているなっていうのが阿佐ヶ谷姉妹の醸し出す雰囲気だと思います。MCって基本的には個性が強い人たちが務めることが多いですよね。この人のフィルターでどうプレゼンしてくれるんだろうっていうのが通常のバラエティー番組のMCの立ち位置だと思うんです。そこを阿佐ヶ谷姉妹さんはフラットで自然に、いろんな考えや意見を自分たちがジャッジするわけではなく、そういうことなんだって1回そのまま受け止めて、じゃあ他のみんなはどう思うんだろうって聞こうとする姿勢がある。まさに“違いを楽しむ”っていう番組コンセプトにハマッてるなと思いますね。
マイノリティー性以外のアイデンティティを探る
ーー番組として、視聴者に届けたいことはどんなところでしょうか。 真野:番組自体は多様性とかダイバーシティーっていうものをテーマにして、いろんな違う意見とか立場や見方があるけど、そのことを1回受け止めて、別に違うものは違うと思っていいんですけど、その違いを楽しんだり、例えば同じ“ギャル”でも人によって違うとか、同じ属性でも真逆だったり、考え方なんていろいろだよなっていうことを感じてもらいたい。それが多様性とか、いろんな人と「ともに生きる」っていうことの前提を作っていくんじゃないかと思っています。 細川:他の人の話を聞きながら、「あ、その考え方面白い」、「いやそれは変じゃない?」っていうことを臆せず自由にシェアすることで得られる発見ってありますよね。そんな率直な意見をどれだけ安心して言える環境を作れるかっていうのが、この番組の大事なところかなって思いますね。 アパートの住人は2人1組で、毎回例えば“パフォーマー部屋”や“ギャル部屋”など、“〇〇部屋”というのが一つのカテゴリーになっています。障害者や性的マイノリティ―の方々も出演されるんですが、その部屋の括りを“マイノリティー部屋”にしてしまうと、ステレオタイプなラベリングになり、そもそも我々がやりたいこととずれてしまう。とはいえ番組の構造上なにかしらで括る必要はあるので、例えばふたりとも静岡出身だから静岡部屋にするとか、もっと違うところでふたりが共通する部分ってないかなと、毎回試行錯誤しています。 安易なバイアスに陥っていないか、チームでチェックしながら進めています。