Haze、東京初期衝動、ちゃくら、つきみ……独自の感性と言葉が共感を呼ぶ“ギャルバンド”の台頭
ファッションのトレンドは20年周期で繰り返されると言われている。今から20年前の2000年前後と言えば、女性ファッションシーンとしては”ギャル”の最盛期。ギャル文化の発信で人気を博したファッション雑誌『egg』の創刊もこの時期で、2000年代前半はファッションだけでなくカルチャーとしても”ギャル”が大きくムーブメントとなっていた。 【撮り下ろし】109前を歩く つきみ あれから20年近くが経過した近年、Z世代の間で2000年前後のテイストを取り込んだファッションが「Y2K」と呼ばれ、いまやファッショントレンドの主流となっている。そして「ギャルピース」の流行やファッションなど、Y2Kからの派生としてギャルカルチャーにも再流行の兆しが現れている。そんな中、ファッションだけでなく、音楽シーンでもY2K、そしてギャル文化が再燃しつつある。2000年代前後の楽曲のリバイバルヒットだけでなく、今年ブレイクした韓国のガールズグループ・NewJeansもY2K的なファッションで注目を博した。国内ではシンガーソングライターの吉澤嘉代子がリリースした新作EPにはギャルをテーマにした楽曲が収録されており、現行音楽シーンでも”ギャル”の存在感は増しているのだ。 とりわけ、一層ギャルの存在感が強くなりつつあるのがバンドシーンだ。近年、女性主体のバンドにおいて”ギャル”をキーワードとしたバンドが頭角を現しつつある。 女性アイドルグループZOCの元メンバーである香椎かてぃが結成した4人組ロックバンド・Hazeは、ギター・ベース・ドラムにキーボードを加えた4ピース編成での生々しいバンドサウンドと気だるげな中にも芯のある歌声が印象的だ。昨年8月にMVが公開された「ギャルガル」はギャルらしい切り口の歌詞が印象的なサマーチューン。バンドメンバー4人全員がボーカルを担当するなど、その楽曲の構成も話題を呼んでいる。 4人組バンド・東京初期衝動はその破壊的なライブパフォーマンスも大きな話題を呼んでいる。自身が公言している銀杏BOYZからの影響を感じさせるパンキッシュなサウンドと衝動的な歌詞を軸としながらも、近年はメロディアスで切実な歌詞を内包した楽曲やシンセサウンドを取り入れた楽曲もリリース。徐々に自身の音楽性を拡張しながら各所で注目を集めている。 2022年結成の4人組バンド・ちゃくらはギターボーカルのサクラの清廉な歌声と、ソリッドなバンドサウンドが切なさを呼び起こす。昨年11月に公開した『海月』のMVは現在40万回再生を超え、バンドシーンにおいて注目を集めていることが伺える。11月にリリースした『タイトル未定』は男女の退廃的な関係性を描く歌詞とシリアスなメロディラインがヒリヒリとした感情を呼び起こす1曲。2022年6月結成で平均年齢19.5歳(2023年現在)、バンドの楽しさが前面に出た演奏には青春の煌めきを感じることができる。 キャッチーなメロディラインと掻き鳴らされるギターが印象的な福島出身の2人組ロックバンド・つきみは自身を「気合い系ギャル・ロックバンド」と称しながら活動を展開。EP『オトコ一瞬ダチ一生』は、シンプルなバンドサウンドに乗るボーカルのにによる感情を全面に押し出す歌唱は聴くものの心を思わず揺さぶる。最新EP『♡きえたくなる度君、刻む♡』には、つきみなりのエールソング「微熱」を収録。ににちゃん(Vo/Gt)の飾らない言葉が一歩踏み出す勇気をくれる必聴ソングだ。 上述した4組に共通するのはパンク、あるいはストレートなロックがベースとなっているサウンドに自身の姿を表した等身大の歌詞を乗せる点だ。自身を曝け出す音楽性は、自分自身のありのままを肯定する芯を持ったギャル的マインドから生み出されるものだろう。メンバーのファッションや音源のアートワーク、MVやバンドのホームページなどの意匠にY2Kやギャルカルチャーを彷彿とさせるものも数多い。他人に左右されず、彼女たち自身の考える美意識がビジュアルにも表れており、ここからもギャル的なマインドを感じることができる。 Y2K、ギャルカルチャーの再流行は現行の音楽シーンにも大きな影響を与えている。今後も増々存在感を大きくしていくであろうギャルカルチャーは、音楽シーンにおいてもムーブメントとなるかもしれない。
ふじもと