2023年度の「ゼロゼロ融資」利用後倒産 増勢を維持し、年度最多の622件発生
2023年度「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況
2023年度(2023年4月ー2024年3月)に「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用後の倒産は622件(前年度比14.3%増)発生した。年度では初めて600件を上回り、年度最多を記録した。 2024年3月は月間最多の66件が発生し、返済開始で増加が加速した格好となった。ゼロゼロ融資の利用後倒産が、初めて確認された2020年7月からの累計は1,369件に達する。 産業別は、最多はサービス業他の202件(前年度比12.8%増)で、全体の3割(構成比32.4%)を占めた。細かい業種別では、最多は「飲食店」の73件だった。 負債額別は、1億円以上5億円未満が227件(同6.0%増)で最多だった。次いで、5千万円以上1億円未満が137件(同23.4%増)で続き、1億円未満が半数を超えた(構成比52.8%)。 コロナ禍をゼロゼロ融資などの各種支援で窮状をしのいだ中小・零細企業は多い。しかし、その副作用で過剰債務を招き、資金調達に課題を抱えながら物価高、人件費上昇などのコストアップに見舞われており、中小・零細企業は体力を削がれている。 金融庁は「2023事務年度金融行政方針」で、コロナ禍の資金繰り支援フェーズから経営改善・事業再生支援フェーズへの転換を表明し、金融機関に中小企業の再生に向けた継続的な伴走支援を求めている。中小企業庁も今年2月、1年間の期限付きで再生支援のツールとして「早期経営改善計画策定支援」を活用した制度を設け、事業再生を後押ししている。 一方で、民間ゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎えている。歩調を合わせるように、日本銀行は3月19日の金融政策決定会合で、マイナス金利解除を決定した。ただ、いち早く金利引き上げに動いた一部の金融機関を除き、大半は金利引き上げに慎重姿勢を崩していない。このため、早急に金融支援が変わる兆しはうかがえないが、今後は倒産だけでなく、事業継続を断念して休廃業を選択する企業が増勢をたどる可能性を残している。 ※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。