【“食品添加物のプロ”が解説】小林製薬「紅麹問題」は“3つの基本を混同している”人があまりに多すぎだ「問題の本質」は“ここ”にある
添加物としての歴史は十数年あります。 先に挙げた「カニカマボコ」のほか、「カマボコ」「練り製品」「お菓子」などに幅広く使われています。 「紅麹を使っているのだから、結局3つとも同じものではないか」と思われるかもしれませんが、この3つには「決定的な違い」があります。 それは「“公的試験”を経ているかどうか」ということです。 ■決定的な違いは「“公的試験”を経ているかどうか」 食品添加物であるからには、厚労省の管轄する「食品添加物公定書(最新第10版)」で規格が定められています。
動物による反復投与の毒性試験、発ガン性試験、突然変異試験、遺伝毒性などの「安全試験」をクリアしなければ添加物として認められません。 つまり、添加物である「ベニコウジ色素」は「公的な安全審査を通過したもの」であるということです。 それに対して、食品である「紅麹菌」「紅麹コレステヘルプ」は「公的な安全審査」を経ていません。 とはいえ、「紅麹菌」は1000年以上という長い歴史の中で伝統的・経験則的に安全性が担保されています。
「その食品を長く食べてきた」という「歴史の証明」があるわけです。その違いです。 ■「食品だから安全」でも「添加物だから危険」でもない 「お前は『食品の裏側』の著者のくせに、食品添加物を擁護するのか」というお叱りの声が上がるかもしれません。 私がここで言っているのは「いい」「悪い」の感情論ではなく、「『食品添加物』は公的な安全性のデータがあり、『食品』にはそれがない」という、その事実です。 「ベニコウジ色素」の安全性は、一応は担保されています。厚生労働省に食品添加物として認可されてからこの十数年間で、問題が起こったという話は聞きません。
「食品だから安全」というわけではないし、逆に「添加物だから危険」ということでもないのです。 当たり前のことですが、口に入れるものは安全性の高いものであることが絶対条件です。 「安全性の担保」は簡単なことではありません。 そして、これも当たり前のことですが、膨大な検査の証明、長い歴史の証明が必要です。「自主基準」「わずか数年」で獲得できるとは、私にはとても思えません。 そこには「制度の瑕疵」、さらには「安全性の軽視」があったのではないでしょうか。
そのあたりに、この事件の根っこがあるような気がしてならないのです。 次回は「麹菌の管理」というアプローチから、この問題を考えていきたいと思います。 *この記事の続き:小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか?
安部 司 :『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事