めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃ楽しい!ジェットコースターみたいなホラー『サユリ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、押切蓮介原作&白石晃士監督のタッグによるホラー、なにわ男子の大西流星が映画初主演を務めるラブストーリー、27年の時を経て実現した安部公房の小説の実写映画化の、思わず引き込まれる3本。 【写真を見る】夢のマイホームに越してきた神木家に少女の呪いが襲いかかる!(『サユリ』) ■ばあちゃんがとにかく頼もしくてかっこいい…『サユリ』(公開中) めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃ楽しい!そんなジェットコースターみたいな感情のアップダウンが体感できる新しいジャパニーズホラーの誕生だ。主人公の則雄(南出凌嘉)と家族は、父、昭雄(梶原善)が購入した夢のマイホームに引っ越してくるが、その日を境に奇妙なことが起こり始める。やがて父が突然死し、祖父、弟、姉、母親までも次々と不幸な死を遂げていく。実はこの家には“サユリ“という名の強力な悪霊が取り憑いており、ここで暮らす人々を呪い殺していたのだ。大切な家族を次々と失い、自身も窮地に追い込まれる則雄。しかしその時、認知症のばあちゃん(根岸季衣)が正気に戻り、「すっかり目が覚めてしもうた。地獄送りにしてやるんじゃ!」とサユリへの復讐を宣言する。 前半はいわくつきの家に引っ越し来た家族を襲う惨劇をじっくりと活写。部屋の隅に不気味な人影が映ったり、消したはずのテレビが点いていたり、家族がなにかに取り憑かれたように徘徊したりといったシーンが連続し、その陰湿さで観る者の恐怖をじわじわためていく。サユリが本性を露にしてからは、3階建ての真ん中が吹き抜きになった家の構造も巧みに利用した臨場感ある戦慄シーンも味わえる。これだけでもホラー映画としては十分な満足感を得られるが、残り半分では敵討ちを誓う則雄&ばあちゃんのコンビと、サユリによるまさかのバトルが展開。家族の介助なしでは生活できなかったにもかかわらず、正気を取り戻してからは圧倒的な強者っぷりを発揮するばあちゃんがとにかく頼もしくてかっこいい。恐怖で背筋をゾクゾクさせ、かつ観終わったあとにはスカッとできる。猛暑が続くこんな夏だからこそ観てほしいサマームービーだ!(ライター・平尾嘉浩) ■最高に愛おしい青春恋愛ドラマ…『恋を知らない僕たちは』(公開中) 「虹色デイズ」を手がけた水野美波による超人気コミックを、「なにわ男子」の大西流星主演で実写化した青春ラブストーリー。高校二年生の英二(大西)と直彦(窪塚愛流)は中学時代からの親友同士。ある時、彼らの学校に英二の想い人である幼馴染の泉(莉子)が転入、直彦と付き合い始めたことで様々な想いが交差していく。 すれ違い恋愛ストーリーの1ジャンルともなっている三角関係モノかと思いきや、ここに直彦にまっしぐらな恋愛体質の小春(齊藤なぎさ)、英二のことが気になり始めた文学少女の瑞穂(志田彩良)、その瑞穂を一途に想うバンドマンの太一(猪狩蒼弥)が加わり、6者6様の恋愛模様が繰り広げられていく。友情と恋愛の狭間で揺れる恋、奪う恋、応援する恋などその想いの寄せ方は様々で、“まだ恋を知らない”彼らが曖昧模糊としていた淡い想いを“本物の恋”にしていく姿が瑞々しく描かれ、尊くも眩しい!あの頃の拙くも真っすぐだった恋を知る誰しもが共感必至。最高に愛おしい青春恋愛ドラマにキュンキュンすること請け合いだ。(ライター・足立美由紀) ■狂気のふちをさまようような迷宮を体感…『箱男』(公開中) 映像化が困難とされてきた安倍公房の同名小説を、『パンク侍、斬られて候』(18)の異才、石井岳龍が映画化。ダンボールの箱をかぶり、覗き穴から社会を見つめる“箱男”は、どこにたどり着こうとしているのか?他人に“見られる”ことなく“見る”という行為に耽る男の独白で語られる物語は、別の箱男たちの出現によってシュールな色を帯び、思索の迷宮へと誘う。 箱はなにかの象徴?箱の中に囚われる欲求はどこからくるのか?そもそもこの世界自体が巨大な箱なのでは?ダークなエロティシズムを漂わせながら、本作はそんな問いを投げかけてくる。永瀬正敏や浅野忠信の怪演にふれつつ、狂気のふちをさまようような迷宮を体感して欲しい。(映画ライター・有馬楽) 映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。 構成/サンクレイオ翼