トレーナーと二人三脚でNPBを目指す 独立リーグ所属、ケガを知る23歳投手が徹底するボディケア
「高校2年の秋ですね。試合中に肘をやっちゃったって、自分でわかりました。腱が切れたとかじゃなく、症状としては軽い部類だったんですけど、その試合はむちゃくちゃ痛かったです。我慢してそのまま投げて試合後、病院に行って、尺骨神経の炎症だって言われました。それから一週間くらいはノースローだったんですけど、その後は普通に投げました。まだ痛かったんですけどね。高校のチームにもトレーナーさんはいましたが、『それくらいなら大丈夫だよね』とのことだったので。その炎症自体は冬を越したら治りましたが、今もどちらかというと肘は張りやすいですね」
深まったストレッチへの理解度
高校時代の故障前は、指示に従いチーム全体で行なうストレッチには取り組んでいたが、それはあくまで練習メニューの一環として行なっていただけで、自分の体にいかなる効用をもたらすのかは考えてはいなかったと廣澤投手は振り返る。ストレッチに対する考え方が変わったのは社会人になってからのことだったと言う。「プロ」という目標ができた分、体のケアに対する意識も変わったのだろう。高校時代、故障時に通っていた病院で教わったストレッチを愚直に続けてきたのが今、結果となって現われている。 「ウエイトトレーニングを始めたのが社会人になってからなんですけど、ウエイトにかけたのと同じ時間をストレッチにかけるようにしています。筋肉に負荷がかかればかかるほど、ケアもしなければならないので」 そんな廣澤投手にストレッチをお願いされるという泉田さんは、「ストレッチはプレー前よりプレー後が大事なんです」と語る。 「ストレッチには大きく分けると3つあるんです。みなさんストレッチっていうと、ひたすら筋を伸ばすのをイメージされると思うんですけど、プレー前にあれをやり過ぎると、緩みすぎてパフォーマンスを発揮できないんです。だから練習前や試合前は、これから動かす筋肉に刺激を与えるため、反動をつけて行なうバリスティック・ストレッチ、それに自分で足上げなんかを行なうダイナミック・ストレッチを行ないます。じわーっとゆっくり10秒~20秒かけて筋肉を伸ばしていくのはスタティック・ストレッチっていうんですけど、それはプレー後に行なうのが効果的です。体のケアにはこれが大事ですね」
横で泉田さんの説明を聞いている廣澤投手は、ふだん自分が行なっているウォーミングアップ、ストレッチにそれぞれ意味があることを聞いて感心している。 「そんなこと、全く知らないで今までやっていました(笑)。話をお聞きして、ああ、なるほどなって。勉強になります」 (後編に続く) ◆本記事は日本ストレッチング協会 協会誌「CREATIVE STRETCHIING Vol.66」で紹介された内容を再編集したものです。
取材・構成・写真/阿佐智