レクサスLBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい
乗り込んだ時点で剛性が高いことがわかる
「本物を知る人が素の自分に戻れるクラスレスコンパクト」をコンセプトに開発されたのが、レクサスLBXだ。LBXはLexus Breakthrough X(cross)overの頭文字をつなげたもので、サイズのヒエラルキーの概念を超えて「新たな価値を提供する」ことを目指している。 LBXの全長×全幅×全高は4190×1825×1545mmだ。GA-Bプラットフォームのベースを共有するヤリスクロス(4180~4200×1765×1580~1590mm)とオーバーラップする。プラットフォームを共有するとはいえ大がかりな手が入っており(詳細は後述)、ホイールベースはトヨタ・ヤリスクロス比で20mm長い2580mm、トレッドは前後ともに1570mmで、45~55mm拡幅されている。 リヤフェンダーの膨らみはクルマをグラマラスに見せているし、筋肉質だ。絶対的なサイズは小さいが、存在感はあり堂々としている。上質なのは見た目だけではなく、ドアを開け閉めする度に感じられる。2021年のNXからレクサスで採用が始まった電動ラッチ(e-ラッチシステム)を採用しており、内も外もハンドルに指を当てて軽く押せば電動でロックが解除される。 ボタンを押すとガチャっと機械的な音がしてドアがスッと外に出る。この一連の動きがスマートでラグジュアリーの度合いを高めるのに貢献しているように感じる。ドアが閉まるときに、いかにも剛性と密閉感が高そうな音を発するのもいい。 LBX Relax(FFモデル)の内装
走る楽しさを感じられるハイブリッド
サイズは小さくとも、レクサスらしいラグジュアリーなムードはたっぷりだ。しかし、走り出して驚いた。見た目とは裏腹に(?)、走りに振り切れているからだ。GRヤリスの硬質でシャキッとした動きを彷彿とさせる。走り出した瞬間に剛性の高さを感じるし、車体のしっかり感は車速が増して路面からの入力が大きくなるほど強く感じられるようになる。 ステアリングを切ると、LBXは狙いどおりに向きを変えてくれる。リヤの追従遅れを感じさせず、クルマ全体が瞬時に向きを変えるイメージ。車体のコンパクトさも相まって縦横無尽に動き回れる。 エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSII 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー リヤモーター:1MM型交流同期モーター 最高出力:6ps(5kW) 最大トルク:52Nm パワートレーンは、M15A-FXE型の1.5L直列3気筒自然吸気エンジンに発電用と走行用のモーターを組み合わせたハイブリッドシステムのみの設定。バッテリーはエネルギーの出し入れ性に優れたバイポーラ型のニッケル水素電池を搭載する。トヨタ・アクアの上級版が搭載するシステムをベースに、アクア(1NM)よりも高出力の走行用モーター(1VM)を組み合わせていると理解すればいいだろう(3気筒エンジンに、従来はガソリン車のみに設定していたバランスシャフトを適用するなどの違いもある)。システム最高出力は100kWだ。 アクアやヤリスクロスと違い、LBXは燃費一辺倒ではなく、「走る楽しさを感じられるハイブリッド」を目指して開発が行なわれた。もう少し具体的に表現すると、燃費よりも走りとNV(振動騒音)を優先した。燃費を優先しないわけではないが(その証拠に、2WDのWLTCモード燃費は27.7km/Lである。ヤリスクロスのGR SPORTは25.0km/Lだ)、優先順位を少し落とした。 バカッ速とは言えないが、LBXのハイブリッドシステムは気分良く走れる程度には力を出してくれる。タイヤが転がり出したあとにアクセルペダルを踏み増したときのグッと押し出してくれる瞬発力の高さは快感に直結。高速道路の料金所から本線に合流するときのような、長い加速が持続するようなシーンでの伸び感が気持ちいい。 バッテリーから持ち出す出力では足りないときはエンジンが始動して出力をアシストするが、エンジンの存在はドライバーに意識させないよう、制御で始動時の回転立ち上がりを滑らかにし、振動を抑えている。また、点火時期を遅角することで、回転0.5次や1.5次のハーフ次数成分を抑え、音の雑味を抑えてもいる。 いずれも燃費と相反する制御だが、それよりも走りとNVを優先したということだ。しかし、少しばかり燃費を犠牲にしようと、もともとが極めて効率の高いシステムなので(空力で取り戻してはいる)、周囲を見渡せば、依然として燃費のいいクルマの部類に収まっている。前述したように、2WDのWLTCモード燃費は27.7km/Lだ。LBXは気持ち良く走って燃費がいいクルマと断言していい。 制御に固有の名称は設けていないようだが、前後左右Gの状態からワインディングロードを走っていると車両が判断すると、自動的に、アクセルペダルを離したときの減速度を強める制御に切り替わる。その際、エンジンを始動させて待機回転数を保っておき、再加速する際にレスポンス良く力を発生させる。これも、走りに振りきった制御の一例。