〈『サザエさん』55周年〉マニアが選んだ珠玉の神回「波平が痴漢に間違われ…」「ノリスケがまさかの失言で出禁に…」
波平の薄毛をイジりまくるフネ
45年の歳月をかけて2022年までに放送された約8000本すべてのサブタイトルを収集し、“サザエさんに人生を捧げた男”と呼ばれている。また、フジテレビのクイズ番組『99人の壁』にも出演した経歴を持ち、SNSのX「磯野家のお茶の間」で毎日サザエさんのサブタイトルをつぶやき続けている。 そんな秋葉さんにベストオブ神回を尋ねると、三日三晩悩んだ上で、“昭和のサザエさんらしい秀逸な一本”と称するエピソードを紹介してくれた。 1971年1月10日に放送された第67回のCパート「お舟百まで波平九十九まで」。波平とフネが夫婦の愛を再確認する物語だ。 ある日、ご飯の中に髪の毛が入っていたことに波平が文句を言う。フネは洗い物をしながら「髪の毛っていうとすぐに頭にくるのよね。ひがんでるのよ、自分の髪の毛が一本しかないものだから」と小言を言うのだが、その後ろにはなんと波平が……。 当然、波平は激怒。2人は口をきかなくなるが、その数日後、波平が痴漢に間違われるというハプニングが起きる。 波平はフネに対して「信じてくれ。わしが愛してるのは永遠にお前1人なんだ」と力説するが、フネは懐疑的。しかし、波平の必死な思いを聞いて「あたしだってあなた以外に信ずる人はいませんもの」と笑顔になると、最後は雨の日に2人で相合傘で帰るシーンで幕引きとなる。 「夫婦の静かな愛の姿が描かれつつ、今のサザエさんではあり得ない演出とテンポのよさ。都々逸からきているサブタイトルも素晴らしいです。長らく波平さんを演じた声優の永井一郎さんも好きな一本とおっしゃっていました」と秋葉さんは語る。 今でこそ良妻賢母キャラのフネが、波平の頭髪をイジる皮肉屋な一面があったとは意外。しかし、ケンカして口をきかない期間でも波平を玄関先まで見送ったり、折り畳み傘を持っていてもわざわざ波平の傘に入ったりと、現代でいう“ツンデレ”のような可愛さがある。 秋葉さんはほかにも、1984年6月17日「イクラ YとN」、1981年6月14日「カツオ 木かげの夢」、2006年4月9日「初恋橋をわたろう」、1979年7月15日「カツオがブラジャー」なども神回だったとあげる。