出産時の母牛がつつかれ死ぬケースも…カラスから牛を守れ! 撃退レーザー異例のヒット 畜産農家大助かり 山陰パナソニック(島根県)が開発
乳牛や子牛への深刻な被害の対策として、山陰パナソニック(島根県出雲市)が開発したカラスを撃退するレーザー装置の販売が伸びている。2022年9月の発売から2年足らずで500台を超え、7月末で671台となった。被害に悩む畜産農家の口コミなどで、島根発の製品が全国に広がっている。 【動画】牛襲うカラスに悲鳴 「群れを追い払えない。行政も助けてくれない」 装置は、カラスが苦手な緑色のレーザー光を形や大きさ、方向を変えながら自動で照射する。牛舎内の柱などに設置し、カラスが牛に近づくのを防ぐ。音楽ライブの機器を手がける東京のレーザーメーカーと開発した。 浜田メイプル牧場(浜田市)とメイプル牧場(益田市)はいち早く装置を導入。2牧場で約2千頭の乳牛に対して計31台を置いている。導入前は、出産時の母牛にカラスが群がり乳房などをつつき失血死するケースがあった。生まれてすぐつつかれ、立てなくなる子牛もいた。 松永和平社長は、爆竹の音やカラスの鳴き声は効果が薄かったと説明。今もカラスは外にいてレーザーがないと再び入ってくるとし、「子牛は毎日のように生まれる。人の配置もいらず助かっている」と言う。 開発のきっかけは山陰パナソニックの渡部昭彦さん(44)の営業活動だった。畜産農家で被害の話を聞く一方、農機具の展示会で農家が対策用にレーザーポインターを持ち歩いていると聞いた。情報を基に商品化した。 装置は工事費別で1台23万円前後で販売。671台中、島根を中心とする中四国地方が179台で最多。農家の規模の大きな北海道が173台で続く。肉牛や豚向けでも注文があるほか、食べ物の段ボールをつつく被害に遭う物流会社、カラスのふんの被害に悩む鉄道会社にも売れるという。 パナソニック製品の販売が中心の同社で、異例のヒット商品に成長したレーザー。渡部さんは「反響の大きさに驚いている。今後は人工知能(AI)識別とも組み合わせてみたい」と話す。
中国新聞社