かつてはマングース…根絶まで20年超 いま新たな外敵が横たわる世界自然遺産の島 専門家は警鐘を鳴らす「いま全力を尽くさねば」
「奄美・沖縄」が世界自然遺産に登録されて26日で3年になる。鹿児島県・徳之島では特定外来生物シロアゴガエルが見つかるなど、外来種問題は後を絶たない。専門家は「未来に自然を残すためにも、いま全力を尽くすべきだ」と警鐘を鳴らす。 【写真】〈関連〉諸田池周辺に仕掛けたわなを確認する永井弓子さん=徳之島町諸田
「グギィ、グギィ」。7月中旬の夜、徳之島町の諸田池周辺にシロアゴガエルの鳴き声が響き渡った。駆除を担う奄美自然環境研究センター(奄美市)の永井弓子さん(49)が懐中電灯で照らすが、見当たらない。「近くにいるはずなのにつかまえられない」。永井さんはもどかしげに話した。 同種はアオガエル科で東南アジア原産。日本では沖縄県や与論島に定着し、徳之島では昨年5月に発見された。環境省などが駆除に取り組むが、生息数・生息域は拡大傾向とみられる。 同省徳之島管理官事務所(天城町)は今月、諸田池周辺にわなを仕掛ける実証を始めた。離島希少種保全専門官の吉留光一さん(37)は「効果が出れば、より多くの地点で駆除が見込める」と期待する。 ■ ■ ■ “侵入者”は動物だけでない。奄美市住用のマングローブ林近くではキク科のアメリカハマグルマが咲き、樹木モクマオウが生い茂る。いずれも人の手で植えられた外来植物で、島内に広く分布する。
奄美大島の植物1307種のうち、3割は外来種とされる。強い繁殖力で在来植物を覆い尽くしたり、果樹など農作物に絡みついたりして枯らしてしまう恐れがあるが、「どこから手を付けたらいいのか分からない」(環境省)ほど膨れ上がっている現状だ。 同省奄美群島国立公園管理事務所(大和村)は昨年11月、優先的に駆除すべき外来植物26種の一覧を作成。市町村などと連携した駆除に乗り出した。釣谷洋輔・離島希少種保全専門官(45)は「植物は一度駆除しても繰り返し生えてしまう。諦めず着実に取り組む」と説明する。 ■ ■ ■ 奄美の外来種問題は今秋、特定外来生物マングースの根絶宣言という大きな節目を迎えようとしている。マングースは1979年、ハブ退治を目的に持ち込まれたが、アマミノクロウサギといった希少種を捕食することから、2000年に本格的な駆除が始まった。それから20年以上かかっており、繁殖すると根絶が難しい外来種問題の深刻さを物語る。
奄美・沖縄の遺産登録は、貴重な固有種が数多く息づく生物多様性が評価されて実現した。奄美市の自然写真家常田守さん(71)は登録の意義を「種の保存」と強調。外来種対策を喫緊の課題と位置付ける。 「自然が失われてから動いても手遅れ。マングース根絶の成功を糧に、他の外来種にも本気で向き合わなければならない」と訴えた。
南日本新聞 | 鹿児島