安くて大粒! 富山湾のホタルイカが豊漁:能登半島地震の影響で不安視も、3月は前年比17倍の水揚げ
能登半島地震に負けず、過去最低の不漁から一転
今年は元日に、最大震度7の能登半島地震が発生。富山湾の漁港施設にも地割れや地盤沈などの被害があったほか、海底の地形変化で定置網が破損した港もあった。「今年もホタルイカ漁は厳しいのでは…」と悲観する声も上がったが、ふたを開けてみれば大豊漁。その理由について、同県水産研究所は「日本海を回遊する群れが大きかったことや、海流・水温といった海洋環境が、富山湾への来遊に適していることなどが考えられる」と解説する。 そもそも、富山湾のホタルイカは漁獲量が不安定だ。1990年代前半には、年間4000トン近く水揚げされたこともあったが、ここ10年の平均は1300トンほどで、豊漁・不漁を繰り返している。昨年が大不漁であっても、「今年も悪い」とは言い切れない状況だった。いずれにしろ、被災地には明るいニュースで、消費者にとっても朗報だろう。そして、なんとかホタルイカ漁ができるまで、港の機能や漁具を復旧させた富山の漁業関係者には頭が下がる。
富山産が鮮魚店でも、手頃な値段で購入可能
流通状況については、すでに鮮魚店に並んだホタルイカを見て「今年は大粒で安いな」と思った人も少なくないのではないか。 兵庫産は例年、流通量や価格が比較的安定している。豊洲市場では今年4月上旬、トレー1枚当たり300~450円(中心値350円)で、前年と同レベル。富山産に比べて安価な上に、流通量も安定しているため、スーパーなど量販店に卸される場合が多い。 富山産は主に料理店向けで、昨年みたいな高値なら、余計に量販店のバイヤーは手を出せない。ところが、今年のように豊漁だと、話は変わってくる。豊洲の競り人によれば「富山産の卸値が500円になったとたん、仕入れにくるスーパーの多くが、兵庫産から富山産に切り替えるようになった」と打ち明ける。
大粒のホタルイカ、手軽においしく味わおう
3月下旬、2つの産地のボイルホタルイカを購入して比較してみた。個体差はあるが、富山産が6グラム前後、兵庫産は3グラムとほぼ倍近い。さらに、はらわたがたっぷり詰まった富山産は、うまみも濃厚だった。 ちなみに富山産のホタルイカが大粒な理由は、はっきり解明されていないのだそう。ただ、「富山湾の水温や餌となるプランクトンなどが、ホタルイカの成長に適している可能性はある」(同県水産研究所)という。 酢みそやしょうゆと合わせるのが一般的だが、築地場外市場の鮮魚店に聞くと、「しょうゆをたらした卵黄にからめるのもおいしい」そうだ。なめろうや茶わん蒸し、炊き込みごはんなど応用範囲は広く、オリーブオイルでニンニクと一緒に炒めればパスタにも合うという。 被災地応援の意味も込めて、豊漁の富山産ホタルイカを食卓の一品に加えてみてはどうだろう。
【Profile】
川本 大吾 時事通信社水産部長。1967年東京生まれ。専修大学を卒業後、91年時事通信社に入社。水産部で築地市場、豊洲市場の取引を25年にわたり取材。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社、2010年)、『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋、2023年12月)。