【ハリスの“庶民派”イメージ戦略】トランプ共和党と対照的な感情面アピールでの好調は続くか
「庶民」のイメージ与える
民主党は開かれたプロセスでバイデンに代わる大統領候補を選ぶべきではないかと思っていたが、対抗馬も現れないまま、ハリスを後継候補とすることで結束することになった。ハリスは副大統領候補に指名したウォルズ(ミネソタ州知事)と組んで、トランプ・バンス陣営からモメンタムを奪い、トランプがリードしていた形勢を瞬く間に逆転あるいは互角に持ち込んだとみられる。ニューヨーク・タイムズ紙が報じる世論調査のハリス対トランプの数字は、全国:48%対47%、ウィスコンシン:50%対48%、ミシガン:49%対47%、ペンシルベニア:48%対48%である。 この論説は、以上のような選挙情勢について興味ある観察を提供している。ハリスは目下勝ちつつあるが、彼女は感情に訴える雰囲気の戦いに勝ちつつあるのだとしている。すなわち、投票行動は必ずしも合理的でなく、直観と熱情に大きく関わる部分があると指摘している。
彼女は人間的な言葉遣いで国民に自身をダイナミックで温かくユーモアのある楽観的な人間として紹介したと論説は述べているが、トランプが発する暗く憂鬱なメッセージとは好対照を成したであろう。ハリスのヒラリー・クリントンとの対比も興味深い。 ハリスとウォルズがバイデンとハリスから始まった民主党のアイビーリーグ離れを継続しつつあるという指摘も面白い。トランプとバンスは共にアイビーリーグ出身である。要するに、彼等は庶民が近づき難いエリートではなく近しい存在だとの指摘である。
テレビ討論をどう戦うか
ハリスがウォルズを副大統領候補に選んだのも彼の豊かな庶民性が重要な要因であったであろう。賢明な選択、少なくとも安全な選択だったと思われる。 彼はリベラルということのようであり、党内左派も支持し得る人物である必要はあったであろう。トランプ陣営は彼に過激なリベラルのレッテルを早速貼っているが、ウォルズの経歴や過去の行動に照らして過激とは到底言い得まい。 現在のモメンタムには恐らく天井があるので、勝つためには、政策の中身を語り始める必要がある、とこの論説は指摘している。その通りであろう。 それはテレビ討論もあるので当然準備が必要となる。これからの推移によっては、政策の詳細は避け、雰囲気の戦いを引き続き重視することも有り得る戦略かと思われる。
岡崎研究所