アングロサクソンが見放し始めた習近平政権 不動産投資偏重の中国経済、デフレスパイラルに有効策打てず IMFの面子丸つぶれ
【お金は知っている】 ようやく、と言うべきか、アングロサクソン(米英)主導の国際金融界はここにきて、中国の習近平政権を見放しつつある。 【画像】中国が発表した新たな地図に非難が広がっている 国際金融論壇をリードする英エコノミスト誌9月7日号は「中国経済の真の問題」と題する記事で、習政権による経済統計改竄(かいざん)、事実の隠蔽及び現実からかい離した経済政策に走っているとの見方が西側世界で広がっていると指摘した。 米金融専門メディア代表の米ブルームバーグ電は10日付で「中国のデフレスパイラル、危険な新局面入り」と報じ、デフレがさらなるデフレを呼ぶ深刻な局面に入ったとの見方を明らかにした。 国際金融の総本山、国際通貨基金(IMF)は、8月初旬、習政権に対し4年間でGDPの5・5%を費やして未完成住宅を買い取る大型財政出動を勧告したが、完全に無視された。IMFは4月に今年の中国の実質経済成長率見通しを4・6%としていたのを、5月29日に発表した中国経済審査報告で5・0%に上方修正していた。理由は、中国当局発表の1~3月の実質国内総生産(GDP)が前年同期比5・3%だったのと、習政権による売れ残り住宅の買い入れなど不動産市況テコ入れ策が奏功すると見込んだためだったが、とんだ見当違いだ。米国などから選りすぐったエコノミスト集団という触れ込みのIMFの面子(めんつ)丸つぶれである。 中国統計の噓は、綿密に中国公式統計の詳細を分析し、現実と突き合わせをすればすぐにわかることだ。中国の実際の経済成長率は実質でゼロ%程度にすぎない。筆者は本欄や、先月末に同時出版した『中国経済崩壊、そして日本は蘇る』(ワニ・プラス)、『中国経済「6つの時限爆弾」』(かや書房)で中国公式統計の噓を論証すると同時に、IMFが中国当局の発表を鵜呑(うの)みにする事なかれ主義集団だと、批判してきた。 IMFエコノミストは経済審査と称して主要国の首都に数日間滞在して丁重な接待を受ける。そして、相手の意に沿うリポートを書き上げ、IMFご託宣とばかりに仰々しく発表する。日本の場合では、デフレのために需要不足なのに、霞が関の財務官僚に誘導されるまま、大型消費税増税を勧告する始末である。 さてグラフは、中国の不動産投資前年比増減率とGDPデフレーターの推移である。いずれも中国国家統計局データだが、改竄の形跡は見当たらない。デフレーターは生産されるモノ、サービス全体の物価指数であり、生産者物価や消費者物価、輸出入の価格動向を反映しているとみることができる。
不動産投資偏重の中国経済はバブル崩壊とともにデフレスパイラルに陥ったことは、中国公式統計でも明らかだが、習政権はそこから抜け出るために必要な財政・金融政策に背を向ける。ひたすら鉄鋼や電気自動車(EV)などの過剰投資と生産を続けるのだが、持続不可能だ。習政権の残る手は不都合な真実を隠すしかないのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)