鬼畜だらけ…実在の猟奇殺人鬼がモデルの映画(3)美しき少女の殺人犯…15歳が親友の母親を殺害した理由は?
事実は小説より奇なり。今回は実在する殺人鬼をモデルにした洋画をピックアップ。理解に苦しむ残忍な連続殺人や、思わず同情してしまうような壮絶な生い立ちを持つ犯罪者が続々と登場。映画としての魅力はもちろん、モデルとなった事件についても深掘りして紹介する。今回は第3回。(文・寺島武志)
『乙女の祈り』(1994)
原題:Heavenly Creatures 製作国:ニュージーランド、アメリカ 監督:ピーター・ジャクソン 脚本:ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ キャスト:メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット、サラ・パース、ダイアナ・ケント 【作品内容】 クライストチャーチの女子高に通うポウリーン(メラニー・リンスキー)は、イギリスからの美しい転校生ジュリエット(ケイト・ウィンスレット)と運命的な出会いを果たす。 ポウリーンは下宿屋を営む低所得の家庭に育ち、ジュリエットは名門大学の学長の娘と、まるで環境の異なる2人だが、好みや感性が一致しており、仲を深めていく。 疎ましい現実を忘れさせてくれる幻想にのめり込む彼女たちの豊かな想像力は、やがて「ボロウィニア王国」という聖なる物語を生み出すのだが…。 【注目ポイント】 本作のモデルとなったのは、1954年にクライストチャーチで実際に起きたイギリスの女性小説家アン・ペリーによる殺人事件である。ペリーは懇意にしていた同級生の女性と共謀して、彼女の母親を殺害した。 映画は事件を克明に再現するのではなく、2人の女子高校生の内面を描くことに重きが置かれており、多感な少女たちの不安定な内面を幻想的に描いている。 実際のアン・ペリーは、殺人事件によって逮捕されたが、数年で仮釈放された後、イギリスに帰国し歴史小説家となり、推理小説家に転身した後、複数の賞を受賞するベストセラー作家になった。 娘たちの親密な関係に異常性を感じ取ったジュリエットの父(クライブ・メリソン)は、ポウリーンの母(サラ・パース)にカウンセリングを受けさせる。同性愛の診断を下されたポウリーンは、ジュリエットとの交際を禁じる母を激しく憎む。 やがてジュリエットは、両親の離婚に伴って南アフリカに行く。母親さえいなければ、ジュリエットと南アフリカに行けると思い詰めたポウリーンは、愛するジュリエットが用意したレンガで母親を撲殺する。 2人は裁判の結果有罪となる。後に2人は釈放されたが、事件後は一度も会っていないという。現実の殺人事件を基にしたストーリー展開ではあるが、本作では、少女2人の友情や愛情、それを引きはがそうとする大人のエゴを描くことに主眼が置かれている。 作品の公開に伴い、アン・ペリーがジュリエットのモデルであることが明るみになった。劇中では、女子高校生時代の2人が性的な関係を結ぶ描写があるが、ペリーはそれを否定し「レズビアンではない」と主張している。
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