野生を失い、おとなしくなったラクダ 遊牧民が足を縛るのには理由があった
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
ある日、妻と一緒に、彼女の実家が飼っているラクダを見に行くことにした。彼女の家族が持っている牧草地を目指し、歩いた。いくつかの鉄条網をくぐって、40分ぐらい歩いたら、すこし離れた小丘の上でラクダの群れが見えた。 彼女は、そこがおそらく実家の牧草地で、自分たちのラクダだ、といった。牧草地が狭くなったことで、この辺りでは他にラクダを飼っている遊牧民はいないからだ。 ラクダは、私たちをあまり警戒しなかった。最近の家畜は、鉄条網に囲まれているせいか、本来の野性を失い、馬鹿みたいにおとなしくなってしまった。 何頭かのラクダの足には『シュドル』が付けられていた。シュドルというのは牛革の紐で作った足かせで、馬に用いるものだ。普通は、馬の前足2本と後足1本をしばる。そうすると馬は遠く行けないし、高く飛べない。 なぜ、シュドルをラクダに使用しているのか。意外な理由があった。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第4回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。