藤井聡太をはじめ若手棋士が台頭してきた将棋界。若手棋士たちのデビューからタイトル戦初登場までの記録を紹介!
竜王に挑戦する佐々木勇気八段は若くしてプロ入りしており、16歳1ヶ月で四段昇段。これは藤井聡太竜王・名人、加藤一二三九段、谷川浩司十七世名人、羽生善治九段、渡辺明九段の中学生棋士に次ぐ早さだ。プロ入りする若さは概ね棋士として大成するかどうかの大きな目安になる指標だが、佐々木は今回のタイトル戦初登場まで14年とかなりの年月が掛かった。それでは他の棋士はどうだったか振り返ってみよう。 【写真を見る】 19歳で竜王を奪取した羽生善治 史上最年少の14歳2ヶ月で四段昇段した藤井は、タイトル挑戦も最年少(17歳10ヶ月)。デビューから約3年8ヶ月での挑戦で、ダブルタイトル戦、そしてどちらも奪取と素晴らしい成績を残している。もちろん獲得も最年少記録だ。 加藤は14歳7ヶ月での四段昇段。これは藤井が破るまで60年以上にわたって最年少記録だった。タイトル挑戦は20歳3ヶ月での名人挑戦と、順調に活躍をしていたが、大山康晴十五世名人の壁に阻まれてなかなかタイトル獲得はならず。初タイトルは29歳の時だった。 谷川は14歳8ヶ月での四段昇段。タイトル挑戦は21歳での名人挑戦で、どちらも加藤に近い記録だ。なお、この時の名人は加藤で、4勝2敗で谷川が奪取し、21歳での名人獲得となっている。これは藤井が破るまでの最年少記録だった。 羽生は15歳3ヶ月での四段昇段。タイトル挑戦は19歳での竜王挑戦で、フルセットの末に奪取を果たしている。翌年の防衛戦で谷川に敗れて無冠になるが、直後にタイトルを奪取してからは27年にわたってタイトルホルダーであり続けた。 渡辺は16歳の誕生日を迎える直前での四段昇段。プロ入りの難易度が上がった現行の三段リーグになってからの中学生棋士としては、藤井が出てくるまでは唯一の存在だった。タイトル初挑戦は19歳4ヶ月の王座戦で、この時は羽生にフルセットで敗れたが、翌年の竜王戦で奪取を果たしている。 こう見ると、中学生棋士はいずれも20歳前後でタイトル戦の大舞台に登場している。渡辺に次ぐ若さでの四段昇段を果たした佐々木が30歳まで掛かったのはかなり苦労したと言える。それでは他に初タイトル挑戦が早い記録を持つ棋士を見てみよう。 屋敷伸之九段は異例の記録を持つ。奨励会入会は中学生で早くはないが、入会から四段昇段まで3年も掛からず、16歳8ヶ月でのプロ入り。タイトルに絡むのも早く、17歳10ヶ月で棋聖挑戦。その時はフルセットで敗れたものの、半年後の再挑戦で奪取。18歳6ヶ月での初タイトル獲得。これは羽生がその少し前に立てた最年少記録をあっさり破り、藤井が更新するまでの記録だった。なお、挑戦に関しては藤井との差はわずか数日である。 本田奎六段の記録もすごい。デビューは21歳と、これまで紹介した棋士と比べて早くはないのだが、デビュー直後に始まった棋王戦でそのまま勝ち上がり、四段昇段からわずか1年4ヶ月でタイトル戦の舞台に登場した。先述した屋敷の棋聖戦は当時半年周期で行われていたことを思うと、史上最速級だ。初参加した棋戦でタイトル戦までたどりついた唯一の記録となっている(創設されたばかりの第1期を除く)。 文=渡部壮大
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