<映画評>実在した黒人大統領執事を描いた『大統領の執事の涙』
時代背景は20世紀前半から現在に至るまで。実在した黒人大統領執事、ユージン・アレンの半生をモデルに映像化した作品。導入部分には、「アメリカの闇」が生々しく表現されている。少年時代、主人公のセシル・ゲインズは奴隷だった。綿花畑で働かされる父親の息子として生まれ、父の不幸な死をきっかけに、屋敷内で働く“ハウスニガー”となった。そのことが、彼の人生を大きく変えることになる。奴隷から解放されたゲインズは、屋内で奉仕する仕事に従事し、結果としてホワイトハウスで、大統領の執事という大役を勤め上げる。
ゲインズの少年時代、黒人は奴隷だった。奴隷から解放された後も、差別を受けることは少なくなかった。しかし、その人生の晩年には、その黒人の大統領が誕生する。たった一人の人生の中で、これほどの変化が起こることを、ゲインズはいつ想像することができただろうか。 日本に置き換えて考えてみれば、少しはイメージしやすいかもしれない。太平洋戦争の戦前戦後から現在に至るまでの時代背景。日本は、アメリカと同様、大きく様変わりしている。それでもゲインズが経験した変化の激しさには、遠く及ばないかもしれない。奴隷として白人に仕え、その後、執事として大統領に仕える。そして、その白人の仕事であるはずの大統領職に黒人が就任するという変化。まさに“奇跡”と感じただろう。 主人公のセシル・ゲインズ役のフォレスト・ウィテカーの名演や、その妻・グロリア役で、テレビ番組の人気司会者、オプラ・ウィンフリーの存在感もみどこだが、歴代大統領がテンポよく登場し、その個性を発揮してくれるところも、この映画の醍醐味の1つだろう。132分間、飽きささない。緊張感も怒りも笑いも涙も、テンポよく訪れくれる。 ■公開情報 『大統領の執事の涙』 2014年2月14日(金)より公開中 新宿ピカデリーほか全国ロードショー! 配給:アスミックエース