三島の視覚障害者 点字投票できず 衆院選期日前、代理投票に 器具保管に不備 市選管が謝罪
三島市で行われた今回衆院選の期日前投票で、市内在住の視覚障害者の男性が公職選挙法で認められた点字投票ができなかったことが29日、分かった。同市選挙管理委員会が点字で記入するための「点字器」をその場に用意できなかったためで、男性はやむなく「代理投票」で票を投じた。 男性は「一人の視覚障害者として、参政権を正しく行使できなかった思いがある」と話している。 視覚に障害がある人の投票については、点字投票と会場の係員に代わりに記入してもらう代理投票が認められている。「自力で記入したい」との思いは根強く、代理投票では「投票の秘密」を知られることに抵抗を感じたり、口頭で候補者名を伝える必要があるため周囲に投票先が漏れることを不安視したりする人もいる。 男性によると、25日に日清プラザ・イトーヨーカドー三島店に開設された期日前投票所を訪れた。過去にも同施設で点字投票をしたことがあり、その際は専用の投票用紙と点字器を持った係員が誘導の上、記入や投票をサポートしてくれたという。だが今回は状況が異なり、「おかしい」と感じていたところ「点字投票のための器具が見つからないので、代理投票でよろしいでしょうか」と言われ、仕方なく応じた。 同市選管によると、点字器は会場に持っていったが、普段とは違う場所に置いてあったため、すぐに所在を把握できなかった。男性の投票後に見つかったという。選管は「決められた場所への保管と従事者への周知徹底など、再発防止に努める」としている。 総務省がまとめた障害者の投票への対応例では、点字投票について投票所に点字投票用紙と点字器を用意することが記されている。市選管は男性に謝罪し、男性は対応の徹底を申し入れた。男性は「投票という行為を自力で能動的に行えることがいかに大切であるか、身をもって実感した」と語り、一層の環境整備を訴えている。
静岡新聞社