在日外国人の無年金状態解消求め市民団体が要望書 国の「問題放置」を厳しく批判
外国籍の人の国民年金加入を不可とした国民年金法の「国籍条項」は1982年に削除されたが、その後も一定年齢以上の在日外国人は加入対象になっておらず、障害基礎年金や老齢福祉年金の受給ができない。そうした現状を受け、無年金状態にある在日外国人らによる「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(李幸宏代表)など4団体が8月1日、社会保障審議会委員に向けた要望書を、厚生労働省の担当者に東京都内で手渡した。 要望書では、現在一定の年齢以上にあるため無年金状態に置かれた在日外国人への年金支給もしくは年金と同等の給付制度の設置を求めている。また4団体は同時に、審議会事務局がある厚労省に対し、要望書を次回審議会までに委員に渡すよう要望。厚労省側はそれについては「(この場では)お約束できない。持ち帰って検討する」との回答にとどめた。 同連絡会によると、国籍条項は実質的に残っており、それにより配慮なく無年金となっている在日外国人は障害基礎年金が62年1月1日以前、老齢福祉年金が26年4月1日以前の出生者。ほとんどが旧植民地出身の在日コリアンだ。 発端は戦前戦後の時期に遡る。戦後の日本で占領政策を実施したGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は国籍による差別の禁止を45年に指令。これを受けた政府が46年、当時の労働者年金保険法にあった国籍条項を削除し、それが現行の厚生年金保険法(54年制定)に引き継がれたことで、厚生年金には現在は国籍条項がない。 しかし一方で、59年に制定された国民年金法には厚生年金にはない国籍条項が盛り込まれた。そこから在日外国人が無年金状態に置かれた経緯がある。年金以外では児童扶養手当、特別児童扶養手当、児童手当にも国籍条項が入り、在日外国人の受給を拒んだ。国籍条項はその後、日本の難民条約批准(81年)に沿う形で82年に削除されたが、必要な経過措置を欠いたために、以後も一定年齢以上の外国人が無年金状態を余儀なくされてしまった。もとより、それ以前にサンフランシスコ平和条約発効直前の政府通達で、それまで植民地支配下にあった朝鮮人、台湾人の日本国籍については在日かどうかにかかわらず、当事者の意思確認もないまま一方的に喪失させられた歴史がある。