農業支援にもふるさと納税 猛暑、豪雨…産地の力に 「訳あり品」返礼品活用
自然災害の被災農家支援などに、ふるさと納税を活用する自治体が増えている。日本農業新聞が大手ポータルサイトや国の資料を集計したところ、4道県・83市町村(31道府県)が、災害で規格外となった農産物を返礼品にしたり、支援に必要な経費をクラウドファンディング(CF)型ふるさと納税で集めたりしていた。常態化する異常気象などを背景に、食料や産地を守る動きが広がっている。 【画像】凍霜害で傷ついた規格外のリンゴ。ふるさと納税の人気返礼品となった ふるさと納税は自治体が集めた寄付の使い道が分かりにくいと批判もあり、総務省が2017年、使途を示した上で寄付を募るCF型などを推奨。同省の資料を集計すると23年度は369自治体がCF型を活用し、うち農業関連支援は3道県・23市町村に上った。 新潟県三条市は、昨夏の猛暑や雨不足で稲作や果樹、酪農が深刻な影響を受け、農家を支援するCF型を初めて実施。目標額の12倍を超える6164万円が集まり、1749経営体に1億9148万円を支給した。 一方、災害で傷つくなどした規格外品を「訳あり品」として返礼品にする自治体が増えている。返礼品57万点以上を掲載する大手ポータルサイト「ふるさとチョイス」を集計したところ、15日現在、少なくとも1県・61市町あった。内訳は米9点、野菜21点、果実190点で、猛暑で細ったネギや台風で傷ついたマンゴーなどが返礼品となっていた。 山形県三川町は7月下旬の豪雨で田が冠水するなどした農家の新米を9月から返礼品に追加。年6~12回に分けて寄付者に送る。寄付額は約9万~33万円で、既に16件の寄付があったという。 23年度のふるさと納税の利用者は1000万人を超え、寄付総額も1兆円を突破した。ふるさとチョイスの運営会社は、気候変動や紛争などのリスクが食料や産地を守る行動につながっていると分析し、今後のふるさと納税のトレンドに「第1次産業支援」を挙げた。 (糸井里未)
<ことば> CF型ふるさと納税
地方自治体の財源が不足する中、抱える課題や解決策を示し、費用を寄付で募る。返礼品がある場合が多いが、本来の目的である「地域に貢献」への思いが反映されやすいとされる。
日本農業新聞