コロナ禍のウォール街で実際に起こっていた金融事件を描いた映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』にシビレた!
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
ウォール街、言わずとしれた世界最大の金融都市ですね。この映画はそこが舞台なのですが、なんとなくイメージはあるけど実際にどういうことをしているのかがわからず、この単語が出た時点で敬遠してしまう人もいるかも知れませんが、株式市場とか銀行とか「お金を扱う企業がいっぱい集まってるとこ」ぐらいの認識で大丈夫です。お金や資産という形のないものを扱う仕事であっても「きっと近くにいた方が仕事しやすいんだろうな」ぐらいの認識でOK。 大前提として物語の中心に出てくる金融取引の手法「空売り」。 これだけ、ちょっと難しいですが、すっごい簡単にいうと「お金持ちほどお金が儲けられて、貧困者は損するナニカ」だと、思っていただければ、作品を楽しむ分には問題ありません。 むしろ、これを機に興味を持ってみても良いかも。 この映画は、貧困格差がどんどん広がりコロナ禍で閉塞感が蔓延するアメリカで、この「空売り」を使って大儲けしようとしている“ウォール街の大物”たちに 「株式市場って、誰でも平等に、努力と運で成功できるとこでしょ? お前らのやってることおかしくね?」と、個人投資家の男が戦いを挑み始める。 そんなお話です。戦い方は簡単。大物たちが「空売りしてる株」を買っちゃう。更に、ひとりでは到底太刀打ち出来ないので、動画配信メディアを使って市民に呼びかけていき、今の経済に不満のある貧困層が一丸となり、どんどん株を買い占めていく。まるでウォール街とネット上を舞台にした「革命戦争」。 ややこしいけど、株価が下がった方がお金持ちは儲かる仕組みなので、売れちゃうと株価が上がるんで困るんですよね。 メディアや政府まで巻き込んだ大騒動となり…。 あとは劇場で楽しんで頂くとして、どこに痺れたかというと「切り取り方は、全て人間」で、このドラマを描ききったこと。群像劇的な撮り方なのですが、登場人物それぞれの一喜一憂で「金融市場」という、目に見えない魔物を具現化していて、非常に状況がよく分かるし、主人公の正義を追っていれば、金融のことなんか何もわからなくても楽しめる。 そんな素敵な作品でした。