<自由奪われ低迷する香港経済>中国・深圳へ流出する消費、浮き上がる香港人のジレンマ
香港政府は腹をくくったか
香港政府は国安法などで外資系企業のビジネス環境が悪化していると感じている事実を内心は理解しているものの、有効な打開策を見つけられずにいる。そこで深圳とのボーダーに北部都会区(Northan Metropolis)という構想を掲げ、香港経済と中国経済をより一体化することで経済基盤を強化しようとしている。 北部都会区には、ITや科学技術の集積地を作る計画で、大きさは香港総面積の3分の1を占める3万ヘクタール、98万人が住み、13万4000人もの雇用を生むとしている。現在、香港島が香港経済の中心地だが、もう1つの中心地を作ると言っても過言ではない。 あるITエンジニアは「まだ、これからの進ちょくを見ていく状況だが、この圧倒的な規模感は香港最後の大開発だ」と語る。 香港政府はもう腹をくくったのかもしれない。自由都市として欧米との取引を通じて経済を活性化させるのではなく、中国経済と一体化することで経済活性化を目指す。ただ、中国と欧米とくに米国とはデカップリングの方向に進んでいて、中国経済の先行きが見通せないことで、中国本土との一体化が安心して経済基盤の強化につながるとまでは言い難い。 資源のない香港は、欧米であれ、中国であれ外部とつながることで生き延びるしかない。それゆえに変化し続けることで香港人は生き延びてきた。ただ、政治的要因で硬直化する態勢が常態化すれば、香港経済が苦しくなるのは避けられない。
田中実