「遊びなんだから真面目にやれ!」…ナベプロ会長がタモリから学んだ「仕事術」
吉田正樹(ワタナベエンターテインメント会長)/'59年、兵庫県生まれ。フジテレビで『夢で逢えたら』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』などを手がけた。'09年に退職後、事務所会長に就任 【一覧】「タモリが司会」好きな番組ランキングの「意外な1位」!
真剣すぎる「神社巡り」
私が身を置くエンタメ業界は、努力したからといって必ず報われる世界ではありません。いくら一生懸命やっても、売れないコンテンツは存在します。すべてお客さんが決めること。だから、自分にできる最後の手段は神頼みしかありません。 神様に対して畏敬の念があるからか、昔から神社巡りをしています。 お参りに行くと、人智を超えたパワーが自分に入ってきて、運気が高まるように感じられる。たとえば、熊本県の「上色見熊野座神社」には、本殿の裏に穴がポッカリと空いた岩があります。穿戸岩と呼ばれているのですが、宇宙人が持ってきたとしか思えないほど巨大で荘厳。こうした自然物を目の前にすると、体内にエネルギーが流れ込んでくるのがわかります。 いかなるときもパワーやエネルギーが入ってくるように、何事にも「ありがとう」と感謝することも欠かしません。お礼をすることで自分の心を開き、何かが入り込む隙間を作っておく必要があるからです。
『笑っていいとも!』で教わった「仕事の流儀」
単なる趣味である神社巡りにしては、真剣すぎると思われるかもしれません。この背景には、フジテレビで働いていたときに仕事をご一緒させていただいたタモリさんの「遊びなんだから真面目にやれ」という言葉が大きく影響しています。 若手時代にタモリさんの『笑っていいとも!』を担当していたのですが、あの番組は必ず12時ちょうどにスタートします。本番が始まるまで私たちはタモリさんと冗談を言い合ったりしているのですが、いざ収録が始まるギリギリの瞬間までラフな雰囲気のまま。その状態でフラッと撮影に入るんです。 表も裏も繋がっている感覚と言っていいでしょう。仕事と遊びの区別がないということだと思います。だからこそ、遊びも真面目にやる必要がある。このタモリさんの教えは、神社巡りをするなかで改めて嚙みしめるようになりました。 琵琶湖の東側にある寺院に行ったのですが、そこからは比叡山がもっとも大きく望める。近くからは決して見えない景色です。大スターも同じで、そばで仕事をしているときは、彼らの何がすごいのか理解するのが難しくなってしまう。ただ、すこし離れたときに、いかに偉大だったかを思い出すんです。 タモリさんの教えを胸に刻んで、これからも真面目に神社巡りを続けたいと思っています。 「週刊現代」2024年12月28・2025年1月4日号より 【さらに読む】『「お笑いビッグ3」タモリだけがうまく生きている《これだけの理由》「今を肯定して自然体で生きればいい」「友達なんていらない」』
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