いつでも買えて、種類もたくさん…コンビニ弁当から読み解く「資本主義」「社会主義」の本質【経済評論家が解説】
適度な貧富の格差は必要
要するに、貧富の格差がゼロになってしまうと、経済がうまく行かないのです。適度な貧富の格差、つまり「頑張って働けば豊かになれる」という状況が必要なのです。 その意味では、格差が大きすぎることは問題です。家が貧しくて教育が受けられず、給料の低い仕事にしか就けない、という子どもがいるようでは、経済がうまく回らないでしょう。日本では義務教育が無償であり、高校の無償化も検討されているようですので、それほど心配していませんが。 一方で、「宝くじに当たれば豊かになれる」というのでは、国民の勤労意欲は高まりません。同様に、たまたま裕福な家に生まれた人は豊かに暮らせる、というのでは、やはり勤労意欲は高まらないでしょう。筆者が相続税率の引き上げを主張しているのは、遺産が人々の勤労意欲を高めないからです。
皆が好む商品が、市場へ潤沢に流通するワケ
ソ連では、経済がうまく行かなかったため、少しは給料に格差をつけることにしましたが、やはりうまく行きませんでした。「パンを大量に作った職人には褒美を出す」と決めたところ、「大量とはなにか」という問題になり、「パンを100キログラム以上作った職人には褒美を出す」といった制度になりました。 そうなると、職人たちは重くて硬くて不味いパンを大量に作るようになり、消費者の幸せがむしろ遠のいてしまったのです。 「美味しいパンを作ったら褒美を出す」という法律を作りたかったのでしょうが、すべてのパンを役人が試食して選ぶ、ということは到底できなかったのでしょう。 その点、日本や米国のパン職人は「美味しいパンを作れば、高く売れて儲かって金持ちになれる」と考えるので、美味しいパンを作るために一所懸命に働きます。需要と供給の関係で値段が決まるシステムだと、美味しい物は多くの人が買いたがるので、値段が上がります。 だれがなにを作るのかを政府が決め、値段も政府が決めるという制度は、合理的に見えますが、実際にやってみると褒美の与え方がむずかしく、うまく行かないのです。 市場経済であれば、パン職人が美味しいパンを作ろうと努力するだけではありません。パンの人気が落ちてご飯の人気が高まれば、パンの値段が下がってコメの値段が上がるので、小麦農家がコメを作るようになり、人々がほしがるもの(コメ)が従来よりも多く生産されるようになる、ということも期待できるわけですね。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義