訪日外国人「美食の旅」で地方誘客 日本の食への関心活用、雇用創出に国も期待
地方側も新施設の建設といった大規模な投資は不要で、コスト面のメリットも魅力といえる。
■経済効果調査へ
観光庁は今年度、経済波及効果の調査事業として、ガストロノミーツーリズムに取り組む自治体などを全国から公募。宮津市提案の事業のほか、美しい星空と瀬戸内の食文化を生かした「星降るレストラン」を企画した岡山県井原市や、和牛の希少種「山形村短角牛」などの食を通じ暮らしを体験する岩手県久慈市の事業など6件を採択し、1件あたり2千万円(上限)を支援する。
観光庁の担当者は「波及効果や課題を調査し、ガストロノミーによる観光促進が全国各地で自走できるように後押ししていきたい」としている。
■地方観光の活性化、人手不足解消が急務
アフターコロナ時代に入って訪日客が急増する中、観光業界は地方も含めて深刻な人手不足に陥っている。働き手が十分に戻らず、一部で営業日を縮小するといった動きまである。ガストロノミーツーリズムなどによって地方が盛り上がろうにも、人手不足の解消が進まなければ「不完全感」は拭えない。
帝国データバンクが10月に実施した企業の人手不足に関する調査によると、旅館・ホテルの62・9%で「正社員が不足している」とし、60・9%で「非正社員が不足している」と答えた。業務効率化やスポットワーク(空き時間の単発労働)の導入などの効果もあり、昨年の調査より人手不足は緩和傾向だが、高い水準にあるという。
一方、観光事業者が加盟する「サービス・ツーリズム産業労働組合連合会」が今春公表した調査結果によると、加盟する宿泊施設の48・6%が人手不足でサービスを提供できず営業日を縮小したと回答。営業時間の短縮も34・3%に上った。また、28・6%が全館休業日を設けたとし、17・1%が店舗の統廃合に踏み切ったとした。
■地域全体で目標共有を 平安女学院大の尾家建生特任教授(観光学)
食を使ったまちおこし戦略は以前から存在していたが、それはいわゆる「美食」が中心だった。地域の特徴が感じられるガストロノミーツーリズムは、新型コロナ禍の行動制限が緩和されて以降、注目を集めるようになり、ブームが訪れているといえる。