アーティスト&写真家としてのヴィム・ヴェンダース展が開催中。彼が追い求めた“夢のシークエンス”とは?
現代を代表する映画監督ヴィム・ヴェンダースによる、アート作品と写真を中心とした展覧会が東京・中目黒の〈N&A Art SITE〉で開催されている。映画にとどまらない、幅広い分野を横断するアーティストとしての才能を、改めて感じることができる。 【フォトギャラリーを見る】 〈THE TOKYO TOILET〉を舞台とした最新作『PERFECT DAYS』で、主演の役所広司が第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞したことで、改めて注目を集めているヴィム・ヴェンダース。その本人が「究極のロードムービー」として自ら挙げる1991年の自身の映画『夢の涯てまでも』に登場する“夢のシークエンス”から生まれたアート作品《ELECTRONIC PAINTINGS》の日本初公開の展覧会が開催されている。当時『夢の涯てまでも』のアソシエイト・プロデューサーを務め、本展を企画した御影雅良に話を聞いた。
「元ザ・バンドのロビー・ロバートソンが、ボブ・ディランのロードマネージャーだったジョナサン・タプリンを東京で紹介してくれたのが、そもそもの始まりでした。それから10年ほど、LAのジョナサンの家にも何回か行っているうちにとても親しくなり、彼が友人であるヴィム・ヴェンダースの『夢の涯てまでも』をプロデュースすることになった時に、日本での撮影を手伝ってくれないかと頼まれたのです」(御影雅良)
「もともとフランシス・フォード・コッポラ監督から当時のハイビジョン技術を勧められていたヴィムに連れられて、NHKの編集室に一緒に行きました。NHK放送技術研究所から研究者たちが来て、ヴィムとHDTV(High-definition Television)デザインを担当したショーン・ノートンの作業を手伝ってくれて一旦、90年5月には夢のシークエンスが完成しました」(御影)
「しかしヴィムはその“夢のシークエンス”に納得できず、撮影が終わった翌91年3月、再度、東京に戻ってきました。すると1年足らずの間にソニーの技術でアナログのハイビジョン映像をデジタル化して、さらに1秒60コマの静止画を凸版印刷の技術で高精細印刷できるようになっていたのです。そこでヴィムは35ミリフィルムの映像をハイビジョンに変換してから、色を変えたり形を変えたりして、デジタル化した。走査線をピクセルに変換したので、現在の4Kや8Kにも対応できるのですが、当時はヴィムが何を求めているのか、誰にも分からなかったですね」(御影)