【会見動画】天皇陛下85歳 平和と災害、平成を振り返る
天皇陛下は23日、85歳の誕生日を迎えられ、これに先立つ記者会見で「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵しています」と振り返った。陛下は2019年4月30日に退位されるため、平成最後の誕生日会見となった。 【動画】天皇陛下85歳 平成最後の誕生日会見=宮内庁提供映像(2018年12月23日)
戦後の繁栄は「多くの犠牲と国民の弛みない努力によるもの」
平成元(1989)年の秋、東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊し、冷戦が終わった。「これからの国際社会は平和な時を迎えるのではないかと希望を持ちました。しかし、その後の世界の動きは必ずしも望んだ方向には進みませんでした」と回顧され、「世界各地で民族紛争や、宗教による対立が発生し、またテロにより多くの犠牲者が生まれ、さらには多数の難民が苦難の日々を送っていることに心が痛みます」と述べた。 陛下は、太平洋戦争で米軍との激しい地上戦が繰り広げれた沖縄をはじめ、サイパン島、パラオのペリリュー島、フィリピンのカリラヤなどの激戦地を慰霊のために訪問されている。特に沖縄について「先の大戦を含め、実に長い苦難の歴史をたどってきました。沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることがありません」と語った。 その上で、戦後の日本の平和と繁栄は「このような多くの犠牲と国民の弛みない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました」と強調された。 雲仙普賢岳の噴火(1990年)や阪神大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)など相次いだ大災害については「多くの人命が失われ、数知れぬ人々が被害を受けたことに、言葉に尽くせぬ悲しみを覚えます」と語った。陛下は皇后さまとともに日本各地の被災地を訪問されてきたが、最初の訪問は昭和天皇の名代(みょうだい)として訪れた伊勢湾台風(1959年)の被災地だったと振り返った。 海外移住した日本人や近年増加する日本に居住する外国人についても触れられた。「日系の人たちが各国で助けを受けながら、それぞれの社会の一員として活躍していることに思いをいたしつつ、各国からわが国に来て仕事をする人々を社会の一員として、私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています」と述べた。 陛下は来年4月30日に退位され、5月には皇太子さまが新しい天皇に即位される。「天皇としての旅を終えようとしている今、これまで象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の1人であった皇后が私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民の双方への献身を真心を持って果たしてきたことを心から労いたく思います」と皇后さまと国民への感謝の言葉を述べ、次の時代を継ぐ皇太子さまと秋篠宮さまに対しては「ともに多くの経験を積み重ねてきており、皇室の伝統を引き継ぎながら、日々変わりゆく社会に応じつつ、道を歩んでいくことと思います」と期待を寄せた。