紀州のドン・ファン事件、元妻の“検索履歴”に元裁判官「実行に移したと言えるかどうかはすごく距離がある」
「紀州のドン・ファン」こと、和歌山県の資産家・野崎幸助さんが覚醒剤中毒で死亡した事件をめぐり、殺人などの罪に問われた元妻の須藤早貴被告に無罪判決が言い渡された。 【映像】サングラス姿の元妻・須藤早貴被告 裁判では須藤被告が野崎さんに覚醒剤を摂取させ、殺害したと認められるかが争点になったが、判決では、野崎さん自らが誤って過剰摂取した可能性がないとは言い切れないと結論づけた。 この判決にネット上では「ドンファンの元嫁無罪か~」「無罪 検索履歴でやってんなとは思うけど、他に証拠なかったか…」「個人的には限りなく黒に近い黒だと思うけど」「無罪勝ち取って遺産6億6000万か…」「検察は控訴するのか今後が見もの」といった反応が出ている。 元裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、「しっかりとした説得的な判決だ」と評価する。検索履歴については「想像の出来事も検索することがある。検索をしたから実行に移したと言うには距離がある」と指摘した。 また事故死の可能性についても語る。「2階のゴミ箱にどういうものがあったかは捜索でわかっているが、1階や家政婦が捨てたゴミ袋の中身には、捜査が及んでいなかった。被害者が自分で(覚醒剤を)飲んで、ゴミ箱に始末して、容態が悪化した可能性は残る」。現状の証拠では「疑わしいが、決定的なものはない。弱いところがあり、有罪にはできない」と解説する。 こうした判断に至った背景として、水野氏は冤罪(えんざい)への懸念を指摘する。「真犯人を野放しにする危険もあるが、犯人でない人を処罰するよりは許せるという思想だ。被害者や遺族には受け入れがたいことだが、自分が身に覚えのない犯人に仕立て上げられて、有罪になってしまうのは怖い」。 裁判官の基準は「ギルティ(有罪)かノットギルティ(無罪)か」にある。裁判において被告の人柄などは関係なく、「『確実な状況証拠がないのか』というところまでしか判断しない」とのことだった。 弁護士の中川みち子氏も、「有罪にするには、証拠に基づいて『この人がやったと間違いない』というところまで立証されないといけない。『疑わしきは被告人の利益に』で、疑わしいだけでは有罪にできない刑事司法の原則を貫いたのではないか」と推測する。「犯罪行為をしたかどうかの認定で、人柄はまた別の話だ」と語った。 (『ABEMA的ニュースショー』より)
ABEMA TIMES編集部