炉端焼きや競り体験も楽しめる大人気の朝市「ゆりあげ港朝市」に行ってみた
ゆりあげ港朝市(宮城県名取市)
「大きいね」と店先で焼いたホタテを頬張るお客さんに「うまいんべ」と答える――。 そんなやり取りが、あちらこちらから聞こえてきた。 日曜の朝7時30分、冷たい海風がほほを刺す。ここには、そんな寒さを忘れるくらいの活気と笑顔があった。仙台駅から車で30分強、仙台空港がある名取市の沿岸部、閖上(ゆりあげ)地区で開催されている「ゆりあげ港(みなと)朝市」だ。閖上と言えば、身が厚くぷりぷりの食感が楽しめる極上の赤貝の産地としても知られている。
「おじいちゃん、おばあちゃんがお孫さんを連れて来ている姿を見ると嬉しくなる」と話すのは、ゆりあげ港朝市協同組合の代表理事・櫻井広行さん。東日本大震災の被災後、いち早く朝市を復活させた立役者だ。 約50店が軒を並べる朝市は、日曜・祝日の6時~13時に開催され、新鮮な魚介や野菜の販売はもちろん、名取市の名物・せり鍋や人気の「元祖ゆりあげ水餃子」などが味わえる。買った魚介を自由に炉端焼きできるスペースもあり、殻付きのホタテやカキをその場で焼いて楽しむ夫婦や家族連れ、グループも多い。200台以上が止められる駐車場は、6時の開場から県内外の車で常にいっぱいになるというのも納得だ。
さらに楽しいのが、10時から開催される競り市(日曜のみ)。子どもから大人まで誰でも参加でき、市価の3割~7割で様々な品が手に入るので、多い時は300人も参加するという。櫻井さんの名調子と威勢のいい掛け声で、会場は笑い声に包まれ、出品された150以上の品が次々に落札されていく。競り市に参加した台湾の観光客も「楽しい。エネルギッシュな体験」と喜んでいた。 決められた日時で開催される朝市は、お客さんにとって非日常体験。それを定期的に続けていく売主たちの努力。「朝市は皆さんの拠り所になる」と言う櫻井さんの言葉が心に残った。 文・伊藤健一 ※「旅行読売」2024年4月号より