築地・豊洲市場だけではない 生き残りをかけて変化を模索する卸売市場
築地市場は11月4日に閉場し、新たに豊洲市場が同7日に開場する予定になっていました。しかし、土壌汚染などの問題により小池百合子都知事が移転の先延ばしを表明。その後、豊洲市場の地下に盛り土がなされていないことが発覚。これらの問題が紛糾し、移転は不透明な情勢になっています。 豊洲市場の問題はその後も大きな関心事になり、卸売市場が急速にクローズアップされています。築地・豊洲市場に目が行きがちですが、中央卸売市場と呼ばれる施設は築地・豊洲だけではありません。中央卸売市場は愛知県名古屋市や大阪府大阪市といった大都市のみならず、青森県八戸市や山口県宇部市など全国40都市に64カ所もあります。 また、中央卸売市場とは別に地方卸売市場と呼ばれる施設もあります。地方卸売市場にいたっては全国に1092カ所も点在し、日々、私たちの食生活を支えているのです。時代の流れやテクノロジーの進化によって、食品流通も大きく変わりました。流通の現場では卸売市場のあり方を巡って、さまざまな議論が交わされています。
水産物は低下したが国産青果は市場経由が多数
全国に点在する卸売市場は、1970~80年代にかけて増加・拡大してきました。しかし、道路などのインフラ整備が進み、トラックといったモータリゼーションの発達もあって物流・流通網は大きく変貌。卸売市場にも大きな影響を与えました。また、2000年代にはスーパーの大型化、IT技術の進展などに伴い直取引が増加。市場経由率は一気に低下しました。 水産物の低下は顕著で、1998(平成10)年度に71.6%だった市場経由率は2012(平成24)年度には53.4%にまで低下しているのです。しかし、その後の市場経由率は微増もしくは横ばいが続いています。特に、国産青果は2013(平成25)年度でも市場経由率が86%もあり、依然として高い経由率を保っています。必ずしも、卸売市場は無用の存在になっていません。 とはいえ、社会は多様化していますから、卸売市場も時代に対応していかなければなりません。農水省は2011(平成23)年に第9次卸売市場整備基本計画を策定し、卸売市場の将来像について検討しています。同計画の中で、農水省は中央卸売市場の地方卸売市場への転換を促しています。