父親ら5人を殺害した男 責任能力の有無が問われた控訴審 実母に暴力を振るった際の心理に話が及ぶと、サンダル履きの親指をしきりに上下に動かした
2018年に日置市東市来町湯田で、父親ら男女5人を殺害したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われ、一審鹿児島地裁で死刑判決を言い渡された岩倉知広被告(45)の控訴審初公判が30日、福岡高裁宮崎支部であった。責任能力の有無が争点となり、控訴後に被告を精神鑑定した医師は「犯行時、重度の統合失調症だった」と主張。起訴後に「妄想性障害」と鑑定し、一審で認められた医師の意見と分かれた。 【写真】男女3人が倒れているのが見つかった民家=2018年4月、日置市東市来町湯田
岩倉被告が公の場に姿を見せるのは約3年10カ月ぶり。無表情で入廷すると、約100席ある傍聴席をじっくり見渡した。着座しても落ち着かない様子だったが、開廷を告げる裁判長の声で座り直し、前を向いた。 縁のある眼鏡をかけ、肩にかかる髪を後頭部で一つ結びにした岩倉被告。痩せた印象で、頬骨は浮き出ていた。ただ、上下緑色のジャージーを着ていても、体格の良さはうかがえた。人定質問では名前などをしっかりとした口調で答えた。 2人の医師が出廷し、被告の犯行時の精神状態について、それぞれ鑑定結果を述べた。計約4時間半。岩倉被告は背中を丸め、身じろぎもせず、時折、話している医師や裁判長に目線をぼんやりと向けた。実母に暴力を振るった際の心理状態に話が及ぶと、サンダル履きの右足の親指をしきりに上下させた。 地裁で死刑判決が言い渡された直後、遺族に飛びかかって取り押さえられた岩倉被告。この日は刑務官7人に取り囲まれ、身動きが取れないように椅子や机が配置された。人定質問以外に言葉を発する機会はなく、深く一礼して退廷した。
南日本新聞 | 鹿児島