私のおそろしポイントを針でつついてくる番組『さや香の違和館ヤバない?』/テレビお久しぶり#108
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『さや香の違和館ヤバない?』(テレビ大阪)をチョイス。 仕事で海外へ行くあこがれ『ミクロヒー~ヒコロヒーのミクロな未承認国家旅~』/テレビお久しぶり#107 ■私のおそろしポイントを針でつついてくる番組『さや香の違和館ヤバない?』 お笑いコンビ・さや香のふたりが、違和感を覚える建物、”違和館”に訪れ、その謎を解き明かすロケバラエティ・『さや香の違和感ヤバない?』。今回の”違和館主”は、底辺芸人でありながら、タワマン高層階に住んでいる橋本さん。彼は『ホテル』というコンビで活動している吉本芸人で、芸人としての稼ぎはほとんど無いという。それなのにどうして、家賃215,000円ものタワマンで暮らせるのだろうか? さて、その気になる理由については本編をご覧になっていただきたいと思うのだが、私が話したいのは、本作が非常に恐ろしい番組であるということ。ここ近年、ごく普通のバラエティかと思ったら実は……というようなホラーコンテンツが流行っているが、本作もそれに匹敵してしまいそうな恐ろしさだ。 番組の中盤、”違和館主”の橋本さんの正体が明かされたのち、ほとんど突拍子もなく、貧乏な若手芸人たち(”売れてない芸人記者団”)が部屋に押しかけてくる。そこで運動会が開催される(なぜ?まったく条理を欠いた展開である)ことになるのだが、彼らは土足で部屋を踏み荒らし、テレビに体当たりしたり、冷蔵庫のものを荒らしたり、床を水浸しにしたり、ルンバの上に乗って壊したりする。もちろん、ある程度の台本というか、そういうお約束もあるだろうが、私は、人がたくさんうちに来て部屋を荒らす、という状況を人一倍恐ろしく感じるのだ。地元の友達がうちのトイレで、座らずに立って小便をしたことすら私はいまだに根に持っている。勘弁してくれ、許してくれ、もう殺してくれ!自分の家で好き勝手をされているとき、まったくこんな気分なのである。夫がうちに他人を連れてきまくる映画『マザー!』(2017)を思い出しながら、とにかくホテル橋本さんへの同情が尽きない後半戦であった。 それにしても、この自由さというか、無邪気さは一体何だろう。前半と後半で、まったく違う番組だと言っても過言ではない。思いついたことを、ひとまず条理なんかは無視して突っ込んでみよう、という態度はもはや貴重とも言えるか。私のおそろしポイントを針でつついてくる番組ではあったが、この傍若無人さを一度その目で確かめておくべきであろう。あと、ホテルというコンビ名、かなり面白いと思います。 ■文/城戸