おいしいお酒に大満足! 「美酒」がテーマの宿3選、箱根・心斎橋・奈良
■酒蔵を再生 「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」
今を遡ること約1300年前からの古都・奈良。平城京の外京であり、太平洋戦争の戦災を免れた旧市街には世界遺産の元興寺の旧境内を中心に中世以降に発展した「ならまち」というエリアがある。江戸時代以降の伝統的な町屋が今も残り、ならまち格子と言われる美しい街並みに多くの観光客が訪れる。 ならまちには春日大社から流れる水脈があり、古くから酒蔵が立ち並んでいたという。そんな酒蔵の一つで明治期創業の奈良豊澤酒造がかつて酒蔵として使っていた建物を生かし、風情ある宿として生まれ変わったのが「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」だ。1935年(昭和10年)に酒蔵が移転した後、住居などとして使っていたが、2018年に全8室のホテルとして開業した。 部屋の梁(はり)や漆喰(しっくい)壁は、明治からのものに最小限の補修を施し、当時の趣が感じられる造りとなっている。和室とベッドルームに分かれた部屋、木製はしごで2階に上るメゾネット、離れなど全室のタイプが異なる。元蔵なら武骨で美しい梁、母屋なら手の込んだ欄間や手回しで開ける窓や波打つ大正ガラスなど、どの部屋も歴史が造り上げた趣に満ちている。 室内には銘酒「豊祝」などを取りそろえており、酒蔵だった昔に思いをはせて奈良豊澤酒造の日本酒をゆっくり楽しめる。保湿や美肌を保つのに良いという酒かすを使った入浴剤で湯につかれば、体もぐっと温まる。 併設のレストラン「ルアン」は酒蔵の土間をリノベーションした建物。シェフズカウンターではフレンチをベースにした和の創作料理を提供する。テーマは「SAKE」で、奈良豊澤酒造の酒蔵直送の日本酒15種類ほどを用意し、ここでしか味わえない「純米原酒NIPPONIA」も。氷温貯蔵で1年寝かすことですっきりした口当たりの後にフルーティーな広がりを感じる日本酒だ。奈良の大和牛を吉野杉で燻製(くんせい)した一品など、料理はどれも日本酒を引き立てる。 JR奈良駅や近鉄奈良駅から徒歩約8分。2人1室利用1泊2食付5万3570円~。 文:小野アムスデン道子(ライター)
小野アムスデン道子
旅行ガイドブック『ロンリープラネット日本語版』(メディアファクトリー)の編集を経てフリーに。東京と米ポートランドのデュアルライフを送りながら、国内外の旅の楽しみ方を中心に、食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース。日本旅行作家協会会員。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。