湘南で新たなスタートを切ったレストラン 人との繋がりで起きた奇跡
2015年、純米酒をメインにこだわりの料理を出すお店「純米酒料理屋しぇんろん」へ舵を切った、羽鳥祐司さん・真理子さんご夫妻。ところが、程なく、飲食業界を揺るがす出来事が続けて起こります。 まずは職場の呑み会などの団体客がいなくなり、ほとんど個人のお客さんになりました。加えて、気候変動のせいか、夏の繁忙期に台風やゲリラ豪雨が相次ぐようになると、もう、豪雨の予報が伝えられるだけで、夜の繁華街はパタッと静かになってしまいました。 そこへ追い討ちをかけたのが、2020年のコロナ禍でした。 「しぇんろん」は、羽鳥さんのお子さんがオリジナルのハムやソーセージを開発していたこともあって、テイクアウトのお弁当や通信販売で何とか凌ぎます。 しかし、本当の試練は、協力金が打ち切られた2023年にやって来ました。在宅勤務の浸透や物価高で、お客さんはあまり戻って来なかったのです。 「もう、この場所でしぇんろんを続けていくことは出来ない。一旦、お店はやめましょう」 真理子さんは、そう苦渋の決断をしました。常連のお客さんからは、すぐさま「やめないで!」と声があがります。閉店の知らせを聞いた方のなかには、リフォームを条件に、新たなお店の場所を貸したいという人も現れましたが……「しぇんろん」にはその資金もありません。 すると、祐司さんがこう切り出しました。 「クラウドファンディングにかけてみないか? まずダメだろうけど、これでダメだったら、自分も諦めがつくよ」 今年2月、リフォーム費300万円を目標にクラウドファンディングのウェブサイトを立ち上げます。若い女性の常連さんが、全面的にサポートして下さったおかげで、賛同者が増えて、なんと3日で目標額を達成することが出来ました。 カフェテリア、居酒屋、純米酒料理屋を経て、3カ月のお休みののち、一軒家レストランとして新たな一歩を踏み出した、羽鳥さんご夫妻のお店「しぇんろん」。こんどのお店では、原点に立ち返って、ランチ営業も再開しました。そして夕べからは、ディナーの営業も始まっています。
昨年から今年にかけて、お客さんから寄せられたいっぱいの応援メッセージの色紙を見ながら、真理子さんはいっぱいの感謝の気持ちを胸に、こう話してくれました。 「人と人が繋がると、奇跡って、起きるんです!」