「小学生の夏休み中に学力差が広がる」原因は? ブラウン大学教授が注目した研究結果
テストの点数だけで子どもの頭脳を評価しないで
全体として、データは60~75%の子どもに夏休みに何らかの学習損失があったことを示した(これは、25~40%の子どもが何らかの学習獲得があったことも意味する)。 以前のデータと同じく、研究者たちは低所得世帯の生徒がより多くの学習を損失したことを発見したが、その影響はごく小さいことも発見した。 夏の学習能力の低下の変動のうち、社会経済的要因によって説明できるのは1%未満だ。だからこの要素が重要ではないという意味ではないが、現在は、以前の研究が示唆したほど重要ではないようなのだ。 この論文の著者は、夏休みの学習損失量を予測するには、学年の学習量の"増加"に注目する必要があることを発見した。つまり、前年の秋から春までの学習量から夏の損失の大きさが予測でき、学習量が多ければ多いほど、その後の損失も(平均して)大きくなるということだ。 これをどう解釈するかは完全には明らかではない。エビデンスを詳しく見てみると、テスト測定のノイズが反映されているように私には思えた。 こういったテストは完璧ではない。他のテストツールと同様に、子どもには調子がよい日もあれば、悪い日もある。工事の騒音があったり、足の指が痛かったり、とにかくいろいろだが、平均すると、そういったことは洗い流される。 しかし、個々の子どもを見てみると、春の調子が極めてよければ、秋に大きな成長が見込まれるとされる。春の調子があまりにもよすぎると、同じことが次の秋にも起こるとは限らないので、夏休みの損失が多いように見えるのかもしれない。 しかし実際は、たまたま春の調子がよすぎただけなのだ。春にテストの結果が悪かった子どもには、その逆が当てはまる。 (専門的には、これを「平均値への回帰」と呼ぶ。平均的に何が起こるかを理解するという観点からは、無関係なことである。以上、私のオタクな解説にお付き合いくださり感謝です) [注釈] (1) Cooper, Harris, et al. “The Effects of Summer Vacation on Achievement Test Scores: A Narrative and Meta-analytic Review.” Review of Educational Research 66, no. 3 (1996): 227–68. (2) Alexander, Karl L., Doris R. Entwisle, and Linda Steffel Olson. “Lasting Consequences of the Summer Learning Gap.” American Sociological Review 72, no. 2 (2007): 167–80. (3) Kuhfeld, Megan. “Surprising New Evidence on Summer Learning Loss.” Phi Delta Kappan 101, no. 1 (2019): 25–29.
エミリー・オスター(ブラウン大学経済学者)