「漫画で読み解く日本」、中国の大学の画期的な教材
【東方新報】広東省(Guangdong)東莞市(Dongguan)で24日から開催されていた「第14回中国国際アニメ博覧会(China International Animation Copyright Fair)」が、大盛況のうちに27日無事閉幕した。 今回の博覧会は60の国と地域から500社を超す著名なコンテンツや知的財産、ブランドが一堂に会し、参加した国際企業と国際的IP(知的財産権)の数は近年最多となった。 日本の熊本県のIPキャラクター「くまモン」の育ての親・成尾雅貴(Masataka Naruo)が来場し、「くまモン」と東莞市の名物「焼きガモ」がモチーフのIPキャラ「莞小鵝(Guan Xiao E)」との夢のコラボも実現した。 中日両国のアニメ交流は、作品だけでなく、IPコンテンツやその他の関連産業でもますます活発になっている。 北京第二外国語大学(Beijing International Studies University)は最近ユニークな教材『漫画で読み解く日本』を刊行した。 同学院の日本語漫画文化創意研究専攻科の教授で「北京漫画学会」会長の陶冶(Tao Ye)氏は、数十年にわたり漫画に深く関わってきた。 彼は日本のメディア「東方新報(Toho Shinpo)」の取材に応じ、漫画を通じて日本を解釈しようとした動機ついて「漫画は一種の国際共通語で、言葉の壁を越え、文化を直感的に生き生きと伝えることができるツールだからです」と説明した。 北京第二外国語大学は、新時代の対外文化交流の使命と多言語でマルチな能力を有する人材の育成という同校の本分に則って、2019年に「日本語漫画文化創意研究専攻科」を設立した。この科は、日本語に精通し、漫画に詳しく、デザインを理解し、創造力に秀でた複合型人材の育成を目指している。 中国の大学の日本語学科には「日本概況」という科目があり、学生に日本の歴史、地理、社会、文化などについて総合的に理解させようとしている。 専攻科の教師陣は「日本概況」の教材をさらに充実させようと、数年間検討を重ね、この『漫画で読み解く日本』という教材を制作したとしている。 この教材は、教師と学生が共同で作り上げるというユニークな形式で制作され、日本の歴史、地理、社会、文化などの知識を、簡潔でわかりやすい漫画で総合的に紹介している。 内容は14章に分かれ、最初の4章では日本地理の概要を、5章からは日本の伝統文化や言語文化を扱っている。日本の山や川から、能楽、茶道、落語など、日本の風俗や人情にいたるまであらゆる側面を網羅している。 続く3つの章では、日本の漫画文化について、日本の「ACG(アニメ、漫画、ゲーム)」、ならびに日本の漫画の起源とされる昔の絵巻物や葛飾北斎(Hokusai Katsushika)、北澤楽天(Rakuten Kitazawa)、竹久夢二(Yumeji Takehisa)、手塚治虫(Osamu Tezuka)、牧野圭一(Keiichi Makino)など各時代を代表する著名な漫画家について解説している。 最後の第13章と第14章は、学生の就職と起業に関わる情報を載せている。アニメ、ゲーム、文化創造の分野でのコミュニケーションツールとして漫画の活用法を紹介している。 陶氏は「この教材は一般の大学や専門学校の日本語学習者や日本語を学ぶ高校生に適しています。また日本に興味のある読者の自習用の参考書としても使えます。『漫画で読み解く日本』が日本語学習者や日本文化愛好家の良き友となることを願っています」と語った。 教師と学生による共同制作は、この教材の大きな特徴である。教師は専門知識を駆使して教材のコンテンツの枠組みを構築し、学生は創造性と絵を描く才能を最大限に発揮して、教材に生き生きした視覚的要素を注入している。 この教材には、日本の風景、伝統的な風習、現代の生活を題材にした漫画作品が多数収録されている。また署名の無いイラストは、全て日本の漫画やクリエイティブアイテムを学ぶ学生が手描きしたものだ。「教師が編集し、学生が描く」という独特のコラボ・モデルは、学生の日本語学習への興味と漫画制作への熱意を刺激している。 漫画のイラストを描く過程で、日本語の理解を深め、日本文化や歴史、時事問題に対する理解を絵で表現することができ、さらに創造的な絵を描くスキルも向上させることができるという。 「私たちは常に教授法の多様化を模索し、試みてきました。学生の漫画作品が教材に掲載されたこと自体が、大きな励みとなります。日本語漫画文化創意専攻科では、日本語の知識ゼロからわずか300日ほどで日本語能力検定N1レベル(最も高いレベル)に合格した学生もいます」、陶氏は専攻科の意義と成果をこのように紹介した。 陶氏はこの教材の序文に「私たちは今、多様な文化と簡便なコミュニケーションが可能な新しい時代にあり、国際的な文化交流の重要性がますます顕著になっている」と書いている。 「異文化コミュニケーション体験をさらに豊かにするため、この教材は日本の有名な漫画家の作品だけでなく、中国の著名な漫画家・豊子愷(Feng Zikai)、王復羊(Wang Fuyang)、何君華(He junhua)、朱丞(Zhu Cheng)の4人の「成語(四字熟語)」を題材にした漫画も掲載している。読者が楽しみながら、中国と日本の文化の共通点や独特の魅力を、さらに深く理解できることを期待している」、陶氏はこう述べている。 陶氏によると、日本の漫画家・牧野圭一はかつて、漫画は翻訳を必要としない国際語であると述べ、王復羊もまた漫画は言語や地域に影響されない国際的な象形文字であると述べたという。 陶氏は「漫画は芸術性と実用性を兼ね備えたものです。国境を越えた『言語ツール』として、国際的な文化交流やコミュニケーションにおいて、他に類を見ない利点があります。また、若い世代が漫画を深く理解していることから、漫画は中日両国の若者たちのコミュニケーションツールとして、さらに重要なものになっています」と、漫画の果たすべき大きな役割を強調する。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。