列車内の迷惑ダンス、多数の乗客の中で大暴れするダンサーに成立する罪は? 鉄道会社は法的措置を検討
●暴行罪は微妙だが‥
次に、踊っている人は「暴れている」といえるでしょうから、当然に暴行罪(刑法208条、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金等)が成立しそうにも思えます。しかし、本件で暴行罪が成立するかどうかは、実はなかなか微妙です。 たしかに、暴行罪は、必ずしも人の身体に接触していなくても成立します。しかし、「暴行」といえるためには、「人の身体に向けられた」有形力の行使が必要です。 今回の動画を見ると、たしかに激しく踊ってはいるのですが、乗客にぶつかるのは避けているようにも見えるため、この動きは人の身体に向けられているわけではないようにも思えます。そうだとすれば、暴行罪は成立しない可能性があります。 反面、列車内の通路部分という狭い場所で、これだけ激しく踊れば、いつ人に当たってもおかしくありません。動画でも、座っている乗客とぶつかりそうに見える動きもあります。そういう点を重視すれば、十分に人の身体に向けられているといえそうです。 また、踊っている人は、こんな狭い場所でこんな動きをすれば、ぶつかる危険もあることを十分に認識しているようにも見えます。 したがって、暴行罪が成立する余地もありそうです。 このように、本ケースは解釈が分かれそうですが、暴行罪が成立するという考えも成り立つでしょう。 ただ、暴行罪も成立するとしても、重い威力業務妨害罪一罪で処理される(「観念的競合(かんねんてききょうごう)」といいます)と考えられるため(東京高判昭和46年3月30日等)、「威力業務妨害罪と暴行罪をあわせて、より重く処罰する」ことは難しそうです。