「被爆3世です」高校生平和大使 オスロで実感した「活動の大切さ」
ノルウェー・オスロでノーベル平和賞の授賞式に出席した高校生平和大使4人が帰国した。長崎から訪問した2人は、現地の若者らと交流や対話を深めた体験を糧に、今後も核廃絶の運動に取り組んでいくという。 【写真】オスロ市内の高校での出前授業で、折り鶴を作る大原悠佳さん(左端)=2024年12月9日、代表撮影 現地時間の11日、オスロにある施設の一室。被爆者らも参加する現地での交流イベントに、市民ら約100人が集まった。高校生平和大使がそれぞれ、順番に自己紹介を始めた。 「津田凜です。2年生です。被爆3世です」 「大原悠佳です。2年生です。被爆3世です」 長崎西高2年の大原悠佳さん(17)は、国連に署名を届ける運動のほかに、国に被爆者と認められていない「被爆体験者」などについて触れた。「原爆で苦しんでいるのは、公式に認められた被爆者だけではありません」と語った。 長崎東高2年の津田凜さん(16)は、対話の重要性を強調。「戦争や核兵器の問題について様々な考え方があるが、意見を伝え続けていきたい」と話した。 プレゼンの後、現地の教育関係者から質問が出た。「平和な世界実現のために、教育の役割とは何か。教育にどう価値を見いだせますか」 大原さんは、原爆で多くの児童が犠牲になった長崎市の城山小学校出身。小中学校の教育が現在の活動のきっかけになったと紹介し、「被爆者の声を聞きながら原爆を学び、罪のないすべての人の命が失われることを知り、原爆を無くしていきたいと思うようになった」と答えた。 今回の訪問で、平和大使たちはオスロに5日間滞在した。10日の授賞式のほか、現地の高校での出前授業、労働組合関係者へのスピーチ、たいまつを手にしたパレードなどに参加した。イベントに合わせて、原爆にまつわる基本的な情報や被爆証言など、準備したスピーチの内容を入れ替えるなど工夫したという。 帰国した大原さんと津田さんは17日、長崎市内で報告会見を開いた。印象に残ったこととして挙げたのは、ノーベル委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長の授賞式のスピーチだった。 委員長はスピーチで、若い世代を念頭に「彼らのみにこの責任を課すわけにはいきません。被爆者たちの遺産を受け継いでいくのは、私たちすべての人間の責任だといえます」と訴えた。 その後、委員長と1分ほど会話する機会もあった。「自分たち(若者)の活動がいかに大切かということを話してくれた」という。 津田さんは「長崎に戻って来て被爆者の方々の証言がいかに貴重かということを改めて実感しました。これからも証言や思いを聞きながら頑張っていきたい」と語った。(小川崇)
朝日新聞社