これからも、このクラブと共に。ペスカドーラを愛し、愛された男・日根野谷建の14年【 #人生に刻むラストゲーム|Fリーグ】
2023-2024シーズンは、ペスカドーラ町田にとって忘れられない1年となった。高強度のフットサルでリーグを席巻し、ファイナルシーズン最終節を迎えるまで首位を堅持。最後の最後で名古屋オーシャンズに逆転を許したものの、その戦いぶりは町田サポーターのみならず、多くのフットサルファンの記憶に刻まれたことだろう。その中心にいたのは、クラブのアカデミーで育った若手選手たち。「育成の町田」は、今やクラブのアイデンティティーとなった。そんな育成組織出身のチーム最古参選手が、今季限りでFリーグのピッチに別れを告げる。男の名は日根野谷建。現在の育成路線の源流となり、苦しい時代を乗り越えてきたベテランは、快進撃を見せた今季のチームをどう見つめていたのか。ペスカドーラ町田一筋。町田を愛し、町田に愛された男のこれまでとこれからを綴る。
代表戦を見て一念発起。名門クラブの一員に
「クラブの悲願でもある初優勝を達成してこそ本当に特別なシーズンになったと思うので、望んだ結果は得られなかったなというのが一番です。全日本選手権もベスト4で終わってしまったので、せめてここで優勝して終われればよかったんですけど。でも、現役最後のシーズンに最後まで優勝争いができて、素晴らしい経験をさせてもらいました。甲斐修侍監督やチームメイト、大好きなサポーター、支えてくださったすべての皆さんに心から感謝したいと思います」 町田の選手としてのラストゲームを終え、日根野谷はそう言葉を絞り出した。サテライト時代から合わせて、ペスカドーラ町田一筋14年。一言で表現するには、あまりにも濃い時間だった。 日根野谷は大阪府出身。初芝橋本高校、阪南大学と強豪サッカー部でプレーしていたが、地元・大阪で開催されたフットサル日本代表対イタリア代表の国際親善試合に感銘を受け、競技転向を決意。大学を中退して上京し、ペスカドーラの門を叩いた。当時町田には、ペスカドーラ町田アスピランチとペスカドーラ町田サテライトという2つのセカンドチームが存在していたが、日根野谷が所属したのはサテライト。2011年にトップチーム登録を勝ち取り、サテライトから昇格した二人目の選手となった。 その頃の町田は、Fリーグ開幕当時やそれ以前から名を馳せていた名手たちがまだバリバリ活躍していた。甲斐修侍、金山友紀らを筆頭に、ジャッピーニャ、横江怜、森谷優太、大地悟、篠崎隆樹、滝田学、ピレス・イゴールといった選手たちが主力を張り、リーグ随一の戦力を誇っていた。 「昔から日本フットサル界を引っ張ってきた先輩たちばかりでしたし、皆さんめちゃくちゃ上手かったです。止める・蹴るといった基礎技術はもちろんですが、二人組の関係とか、パスを受ける前のフェイクとか、『フットサル的な動き』の質がとにかく高かった。フットサル選手ならではの上手さ、凄みのようなものを日々感じながら練習していました」 錚々(そうそう)たる面々のなかで揉まれながら日根野谷も必死で食らいつき、徐々に出場時間を伸ばしていった。先輩たちのように一芸に秀でたタイプではなかったが、短い時間でも気持ちを前面に押し出し、献身的に戦える若手として台頭。2015-2016シーズンには全日本フットサル選手権を制覇し、見事日本一にも輝いた。 チームに大きな変化が訪れたのは、2010年代後半に入ってからだった。長く屋台骨を支えてきたベテラン選手たちの多くが現役を退き、入れ替わるようにアスピランチから有望株が続々と昇格。チームは一気に若返った。それまで若手の部類に入っていた日根野谷も年長側となり、集団を引っ張る立場となった。 世代交代が進み、新時代を迎えようとしていたペスカドーラ町田。クラブ運営も順調そのものに見えたが、突如大きな試練に見舞われることとなる。
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